10:名無しNIPPER[sage]
2017/06/11(日) 14:17:08.10 ID:6ZN736J50
意識が遠のき目を閉じてしまおうとしたその時、後ろからほんのりと光が射す。背嚢を投げ捨てた方角だ。そちらを見ると、小さな瓶のようなものが浮かんでいた。瓶の中は緑色の液体で満たされており、ひときわ強い光を放つとその液体は瓶から飛び出しあたり一面に広がった。たちまち痛みは引いていき、胸の穴もみるみる塞がっていく。私は傷口が治る様子をぼーっと眺めがら、トトリの作った薬の中には持ち主が傷を負うと、自動的にその傷を治すものがあったこと。どんな怪我も一瞬で治してしまう薬があったことを思い出していた。
「くくっ、あはははっ」
自然と笑いがこみ上げる。トトリは私に危機が迫った時のために、私がいつも使っている背嚢に薬を忍ばせてくれていたのだ。自分の作ったアイテムを使えない状況でも私を助けられるように。もしもトトリの力は借りない、と子供みたいに馬鹿な意地を張ってしまった時のために、こっそりと。
ずっとうじうじ悩んでいた自分が馬鹿らしくて、馬鹿らしくて。私は洞窟中に響くような大きな声で笑い続けた。
洞窟には光が差し込み、魔物が散らした氷の結晶をきらきらと照らしている。心の底から、美しいなと感じられた。
15Res/9.77 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20