24: ◆2mwK9kDO1Y[saga]
2017/06/12(月) 00:27:12.85 ID:G8eGESGkO
伏し目でこちらを見つめてくる彼女は、どうやら僕を睨んでいるつもりのようです
僕には彼女のそれが、小動物のように見えて仕方がありませんでした
ふと気が付くと、僕は、彼女の頭に手を添えて、優しく撫でていました
「マコトさん?」
若干上ずった妻の声を聞いて、僕は我に返り、手を引っ込めました
「……あ、ごめん。なんでもないよ」
それからは、一言も会話を交わしませんでした
普段なら、いきなり会話が途切れれば、すぐにでもその場から離れたくなって仕方がありません
でも、その時の僕は、彼女が隣にいるだけで心地よさを感じていました
暫くして、彼女の肩が僕に荷重をかけ始めました。
「……カスミ?」
妻が、僕に全体重をかけ始めました。
必然と、彼女の頭が僕の上腕部にもたれかかります。
「ちょ……どうしたの?」
妻の様子を窺うと、スースーと、穏やかな鼻息が聞こえてきます。
妻は、寝てしまったのでした。
妻が寝ている姿を観察するのは、初めての事でした。
きめ細やかな肌や、艶やかな黒髪、長いまつ毛……潤った桜色の唇
全てが、生き生きとしているのです
彼女から立ち上ってくる甘い匂いが、僕の心を締め付けます
皮肉なことに僕は、妻を失って初めて、妻の魅力に今更ながら気づいたのでした
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