曜「梨子ちゃん、怒るわけないよ」
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29:名無しNIPPER[saga]
2017/06/11(日) 14:49:29.66 ID:3EGa2FplO
両手を広げ、大げさに驚く。
千歌ちゃんの両手から、雫が落ちていく。

「梨子ちゃんはさ大人っぽいと思ってたら、意外とあわてん坊で時々奇想天外でビックリする事、しちゃうんだよね」

「……千歌ちゃんはね、純粋で真っ直ぐ。見たまんま。先の事なんて考えずに閃いたらぐいぐい飛び込んじゃう」

海の中で、私の言葉は届いていたのかな。

「千歌ね、似てるなって思った。梨子ちゃんが前に病院で言ってくれた気持ち、すっごくよく分かったんだ! 私も、一緒に頑張れる人だって思ったし、探していた誰かに出会えたって思えたんだよ!」

やや興奮気味に、千歌ちゃんは言った。

「ありがとう……」

私は小さく微笑んだ。

「それから、曜ちゃんは、背中を押すのが上手。色々器用にこなせて周りとすぐに馴染んじゃう……でも、八方美人な所もあるの。何でもできて誰にでも優しいなんて、ずるいよね。でも、私、ずっと曜ちゃんみたいになりたいって思ってて。曜ちゃんみたいに、何かに打ち込んで夢中に目標を追いかけたい。でも、私には難しかった。好奇心も人並みだし、勉強もそんなにだし、自慢できること何にもないし……」

「そんなことない」

彼女は首を振った。

「そんなことあるの。それでね、ずっと曜ちゃんに申し訳ないなって思ってた。曜ちゃんが部活やイベントに誘ってくれても、私、自分の気持ちが分からなくて断ってばかりで。そのうち、千歌ね、曜ちゃんに嫌われるだろうなって思ってたし、実際、曜ちゃんはきっと呆れてたと思う。普通は嫌だって文句ばーっかり言ってるくせに、何にも自分からしようとしなかったから」

千歌ちゃんからこんな風に曜ちゃんのことを語るのを聞いたのは、これが初めてだった。
私は一言も聞き漏らさない様に、千歌ちゃんを見た。

「曜ちゃんの側にいると、自分が惨めになった時もあった。お母さんもお姉ちゃんも友達も、気が付けば曜ちゃんと私を比較してて、みんな悪気はないんだろうけど、それがずっとずっと小さい頃から続いてた……そうなると、今度はね、私自身が曜ちゃんといるのが辛くなった」

千歌ちゃんは右手で自分の胸の真ん中辺りを掴んだ。
濡れた服を力いっぱい握りこんでいた。
しわの寄った服が、彼女の切なさを表しているようだった。

「曜ちゃんと友だちで誇らしい自分と、情けない自分がいて……今もね、よく分かんない」

「そう……」

強い感情が、身動きを取りづらくさせる。

「私が梨子ちゃんに付き合おうって言った時、梨子ちゃんが言ってたよね。私の事を見てくれてる人がいるって。曜ちゃんの事だって、すぐに分かってたんだけどね、ごめんね、私は梨子ちゃんが思ってるような純粋な子じゃないよ。曜ちゃんを引き合いに出されて、正直、あの時、辛かった」

そんな風に、思っていたなんて。
私は、けれど、かける言葉が浮かばない。

「それもあって、無理やり梨子ちゃんに一ヶ月だけでって頼んで……最低だね」

「ううん、私だって……答えられない気持ちに、ただ自分が傷づきたくなくて、いいよって言ってしまったもの」




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