20:名無しNIPPER[saga]
2017/06/08(木) 15:58:05.25 ID:l5/QKUUT0
「泊まっていきなよ」
と、曜ちゃんが提案した頃には、最後のバスがぎりぎり間に合うくらいの時刻だった。
時計を見て、私は首を振った。
「ううん、泊まりたいけど、今日は止めておく」
「そう?」
曜ちゃんは引き止めはしなかった。
「明日の宿題、家に置きっぱなしだしね」
「だよね、残念」
「服、ありがとう。夕飯も、毎日でも食べたいくらいですって、言っておいてくれる?」
「喜ぶよ」
曜ちゃんは、じゃあ、送って行くね、と言ってバス停まで着いてきてくれた。
バスに乗り込んで、姿が見えなくなるまで、曜ちゃんはずっと手を振っていた。
どんな気持ちだったんだろう。
好きな人を振った女と一緒にいるって。
自分のせいで怪我をした人間と一緒にいるって。
それが、大切な友人だとして。
曜ちゃん。
ねえ。
どんな気持ちで、泊まっていきなよ、なんて言ったの?
私にはできない。
それだけ、私に執着がないってこと?
それとも自分の心にたくさん傷を刻んでいた?
音楽プレーヤーを取り出して、イヤホンを耳に挿した。
先ほどまでの賑やかな食卓を思い出すと、一人で聞くには、少し寂しい。
誰か、側にいて一緒に聞いて欲しくなる。
曜ちゃんも、そんな気持ちだったのかな。
それが、私だとしても――?
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