8: ◆T4kibqjt.s[saga]
2017/06/06(火) 22:27:07.16 ID:T5tfdE0X0
どちらからともなく、見送りの時に通るいつもの道をいつもより遠くまで、いつもよりゆっくり歩く。すぐそこまで迫ってきてるその瞬間を、少しでも遠ざけるかのように。
けど、やっぱり現実を見なくちゃいけなくて。
「もうこの辺でいいよ。ありがとう」
落ち着いた調子で言い、Pはアタシの手を離した。
「えっ?…あ、うん。そだね!じゃっ、行ってらっしゃい!」
あー…ついにこの時がきちゃったか。
「恵美」
「うん?…んっ」
突然ぐいっと腕を引かれて、壊れ物を扱うかのようにふわりと抱かれる。戸惑うアタシの顎をくいっと上に向かせ、唇に軽くキスを落とした。それでも十分、想いは伝わってくる。アタシはとっさにそれに応え、必死に想いを返す。早朝とはいえ、そこが普段は人通りの多い道だという事もすっかり忘れて。
予期せぬ不意打ちにクラクラしつつ、離れてくPの唇を追いかけそうになるのを必死に我慢する。これを耐えるのは中々大変だった。だって、キスが終わればPは遠くに行っちゃうから。
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