6: ◆T4kibqjt.s[saga]
2017/06/06(火) 22:24:02.58 ID:T5tfdE0X0
「しゅ、出張…?」
受け入れがたい事実を聞かされたアタシは、Pからカバンを受け取ろうとした手を伸ばしかけた姿勢のままフリーズしてしまった。
「それって、どれくらいの期間なの…?」
正直聞くのは怖かったけど、それでも聞かずにはいられなかった。
「…短期だ。二週間」
「にしゅっ…!?」
二週間…!?全然短期じゃないよ、ありえない!だってアタシ達新婚さんだよ!?昔と違って事務所で会えない分どれだけイチャイチャしてもし足りないくらいなのに、二週間もお預けって事!?そんなのって…
「恵美…済まないが俺が帰ってくるまで、待っててくれるか?」
「…っ」
今にも漏れそうな本音を必死に抑える。
「…うん、待ってる!一人は寂しいけど、二週間なんてあっという間だし!それにお仕事だもん、しょうがないよね!だいじょぶだいじょぶ、行っといで!」
うそ。大丈夫な訳ない。行かないで、どうしても行くならアタシも連れてってって言いたい。縋り付きたい。
でも、出来る訳ない。そんな事したって、ただ意味もなく彼を困らせちゃうだけだから。今にも涙が零れそうになる。Pの顔を見ちゃったら、多分もう無理。
申し訳なさそうな態度のPに背を向けて気合で気持ちを抑え込み、振り向くと努めて明るく言葉を返した。気持ちを隠す演技をするのがこんなにも難しいと感じたのは、この時が初めてだった。
「…恵美、その」
「もぉ、ゴハン冷めちゃうよ?ほらほら、早く食べちゃってー。片付かないからさっ」
「…っ。…あぁ」
何か言いたそうにしてたのは明らかだった。多分アタシの行かないでって気持ち、バレちゃってるんだね。けど結局、Pは何も言わずにアタシの横を通り過ぎた。
それは、アタシの強がりを指摘した所で何も解決しないから。これはアタシとPにはどうしようもない事。そう思うと、アタシの気持ちは一層落ち込んだ。
101Res/77.29 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20