5:名無しNIPPER[sage saga]
2017/06/04(日) 18:35:19.97 ID:uS13NFUz0
「初音ミク!!」
彼女の言っていることはさっぱり理解できなかったが、思わず叫んでいた。
どっと汗が噴き出す。
鼓動が早くなる。
「おっとぉおじさん、マスター契約もしてないのに動かないでもらえる? 一般人殺すと面倒でさァ」
『重音テト』はそう言うと初音ミクの青い髪を乱雑につかんだ。
昨日2時間もかけて手入れしたそれは、無残に引きちぎられ、泥にまみれている。
「こいつはボクが貰っていく。 おじさんは何も関係のない人なんだから、昨日と今日見た事は全部忘れて明日からまた会社に行けばいいんだよ」
「……は」
「気を付けて喋りなよおじさん。人間は思ったより簡単に殺せる。心臓を刺しても死ぬ、全身から血を噴き出させても死ぬ、首を絞めて窒息させても死ぬ。おじさんだって、それこそ畑から零れた腐りかけのトマトを踏み潰すのと同じくらいたやすく死んじゃうんだから」
何かとんでもなく危険なものの一部に触れたのは感覚で理解した。
何の縁があるわけじゃないあのロボットと引き換えに命が助かるなら儲けもの。
『重音テト』の言う通りにすればいい。考えなくてもそれくらいは分かる。
「さぁ、さっさと回れ右しなおじさん」
なんだこのいら立ちは。
このただならぬ空気を放つ彼女の言う通りにしなければいけない自分の非力さか、昨日死ぬ思いで手入れした髪を引きちぎられた悔しさか。
「……」
「結局だんまりかー」
「……だ」
「あ?」
自分でも何でそんなことを言ったのか分からない。
「そいつのマスターは俺だ!!」
「……君は実に馬鹿だな……!!」
重音テトの額に青筋が浮かぶ。
「ムカついたから最強の曲でいたぶって殺してやるよォ」
「……ッマ、マスターは、俺だッ……!その初音ミクのッ!!」
「まだ言うか雑魚がぁ!!」
狂ったように、相手を激昂させたその言葉に縋りつく。
死を覚悟した刹那。
「よくできました」
「!?」
≪#sm1249071「えれくとりっく・えんじぇぅ」が発動しました≫
日の落ちた薄闇に響いたのは、無機質なアナウンスだった。
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