【僕だけがいない街】「悟と過ごした時間があったから、あたしは幸せになれた」
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◆pYeaDGyi0Qrt
[saga]
2017/06/04(日) 09:37:51.14 ID:GQ1RtyMX0
そう思ってしまうようになったのは何時頃からだっただろうか。この儚い願いは、心の空へ投げ出され、雲に乗って飛んで行く。
心の空はとても曇っていた。もしかしたら、私は、その雲を払いのけ、綺麗な星空を見たいのかもしれない。
この願いが届いなら、空はきっと晴れるに違いないって。
そしてそこには、私だけじゃなくもう一人、居なくちゃいけない人がいて、大きなクリスマスツリーの下で、満遍なく空に広がる沢山の光に照らされて、それで、それで―――。
5
:
◆pYeaDGyi0Qrt
[saga]
2017/06/04(日) 09:39:17.67 ID:GQ1RtyMX0
ピピピ――。
ピピピ――。
ピッ……。
以下略
AAS
6
:
◆pYeaDGyi0Qrt
[saga]
2017/06/04(日) 09:40:15.63 ID:GQ1RtyMX0
『ワンダーガイ』
ヒーローものの、少年漫画。
悲哀を背負いながら、戦えるのが自分一人であったとしても、戦い続ける正義の味方。
彼は、みんなの想いがあるから頑張れると、一人ではないんだとそう言った。
以下略
AAS
7
:
◆pYeaDGyi0Qrt
[saga]
2017/06/04(日) 09:40:55.98 ID:GQ1RtyMX0
だって――
「悟っ……」
以下略
AAS
8
:
◆pYeaDGyi0Qrt
[saga]
2017/06/04(日) 09:43:12.19 ID:GQ1RtyMX0
悟が目を覚まさなくなったあの事件の日以来、あたしは、毎日の様に、悟の眠る病院へと通っている。
私ももう中学生、あれから実に一年以上の時間が経過していた。
そんなあたしを見てか、ケンヤ君や悟のお母さんはあたしを心配しているようだった。
自分でもみっともないことくらい、わかってる。
以下略
AAS
9
:
◆pYeaDGyi0Qrt
[saga]
2017/06/04(日) 09:44:34.20 ID:GQ1RtyMX0
普通の女の子としての自由。
それを悟はあたしに与えてくれた。
でも、あたしは普通の女子中学生としての生活を歩んでいるとは、決して言えない。
その事への後ろめたさもあって、あたしは自分が本当に価値ある存在なのかと、自身に問い質してしまう。
以下略
AAS
10
:
◆pYeaDGyi0Qrt
[saga]
2017/06/04(日) 09:46:28.50 ID:GQ1RtyMX0
そしていつしか――
〔あたしじゃなくて、悟に助かって欲しい〕
以下略
AAS
11
:
◆pYeaDGyi0Qrt
[saga]
2017/06/04(日) 09:48:50.06 ID:GQ1RtyMX0
こんなの、悟に聞かれたら、馬鹿って言われるに違いない。
でも、それを聞いてくれる悟は、もうずっと眠ったままだ。
だからあたしは、『もしあの時に戻れたなら、悟を拒絶したい』そう思うにまで至っていた。
あたしが例え虐待され続けて、もしそれで死んでしまって、そんな未来があったとしても、悟には生きていて欲しい。
そう思えるだけのものを、あたしは充分に悟から貰った。
以下略
AAS
12
:
◆pYeaDGyi0Qrt
[saga]
2017/06/04(日) 09:49:37.67 ID:GQ1RtyMX0
それでも。
あたしは、思わずにはいられないのだ。
以下略
AAS
13
:
◆pYeaDGyi0Qrt
[saga]
2017/06/04(日) 09:56:20.19 ID:GQ1RtyMX0
「……思い上がりだべ」
朝の歯磨きを終えて、唾を吐き出すと、鏡に映る自分に、悪態をついた。
本当に、あたしは、駄目だね。
以下略
AAS
14
:
◆pYeaDGyi0Qrt
[saga]
2017/06/04(日) 09:58:13.33 ID:GQ1RtyMX0
「……一限目は遅刻して行くべか」
もうずっとしていなかった遅刻だけど、今日はなんだか本当にあの頃のあたしへ戻ってしまっているような気がして、みんなと会うのが少し、躊躇われた。
以下略
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