19:名無しNIPPER[saga]
2017/06/04(日) 08:59:20.09 ID:MaZC+zyvo
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「これは……見事ですね」
「ええ」
今夜の月は満月で、私の味方でした。
山に分け入った訳でも、ましてや幽世への鳥居を潜ったでもなく。
京の街にぽかりと空いたそこは、息を潜めるようにさざめいていました。
一歩を踏み出す度に足もとが秋を奏でて。
それこそ、このままCMでも撮れてしまいそうな、美しい景色です。
「あんなにゴネて俺を連れ出したのも……少し、分かります」
「来て良かったでしょう?」
「……ええ。ありがとうございます、高垣さん」
「どういたしまして」
モミジが揺れ、モミジが流れ、モミジが鳴る。
夜の帳の下で、なお鮮やかな赤と黄色が月明かりを跳ね返しています。
これならお膳立てをした甲斐もあったというもの。
甲斐じゃなくて、京都ですけれど。
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