10:名無しNIPPER[saga]
2017/05/30(火) 04:19:25.75 ID:0pd4b6qCo
○
「それでそれで! どうやってプロデューサーさんを誘うの?」
「えっとどうしようかって思ってて……っていうか! 勝手に社長室なんか使っていいんですか?」
「へーきへーき。しばらく社長は来ないから大丈夫よ」
「それならいいんですけど……」
「ふふ、その辺はバッチリだからね。と、プランはある?」
「プランですか、正直なところ全く思いつかなくて」
「そっか。でもそんな難しく考えることないわよ?」
「え……?」
「プロデューサーさんとお仕事に行った帰りにでも、『デートしてくれますか?』って言っちゃえばプロデューサーさんはイチコロよっ!」
「……いや、そんな簡単に聞けるわけないじゃないですか」
「えー、真ちゃんならいけるわよ!」
「……小鳥さんはそれができないからこの歳になっ」
「真ちゃん?」
「ごめんなさい!!!」
うん、小鳥さん相手にこのことは良くなかった。反省。別に小鳥さんの目力が怖かったわけじゃないから、うん。
「……とは言ってもですね。プロデューサーは美希からのデートの誘いなんかよく断ってますし、デートする時間なんか正直あまり取れない、と思うんですけど……」
「うーん……美希ちゃんは普段からよくベタベタしてるし、しょっちゅうプロデューサーさんに色々とお願いしてるでしょ?」
小鳥さんからの問いかけにこくりと頷く。
「でも真ちゃんはそういうの全然してない……というかそんなことしなかったでしょ?」
「そう、ですね……」
「だからこそ、そういうことを普段してこない真ちゃんからのお願いだったらプロデューサーさんも断わらないと思うわよ。なんだかんだ言ってあの人もアイドルのみんなに甘いからね……」
「……なるほど、確かに…?」
「まあ、不安よねぇ」
「えぇ……」
「だったら、はい! これあげる!」
はい、と小鳥さんから黄色のカチューシャを手渡される。
「これ、小鳥さんのじゃ……」
「そうだけどそっちは別。お守り、みたいなものね」
「お守り?」
「ええ。それを持っていれば真ちゃんは一人じゃないでしょう? だからお守り、ってこと」
「…ありがとうございます、小鳥さん…!」
「ふふっ、どういたしまして」
「それじゃ、ボクはレッスンに行ってきますね!」
「気を付けてね。あ、そうそう。真ちゃん、きちんと自分を信じてあげてね?」
「自分を?」
「そう。誰でもない、真ちゃんが自分の想いを信じること。言葉にするのは勇気がいるけれど、自分の想いを真ちゃんが信じてあげればきっとその想いはつながるから。それだけは、忘れないでね」
「わかりました、ありがとうございます!」
自分を信じること。その言葉はどことなくふわふわしていたけれど、何故かすっと胸に入ってきて、不思議と不安が立ち消えていくのがわかった。
「真ちゃんがちゃんと好きだって気持ちを伝えられれば大丈夫よ。プロデューサーさんも……同じなんだから」
真が立ち去った後、誰にともなくぽつりと呟いた小鳥の言葉は静かに消えていった。
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