森久保乃々「これだけは無理なんですけどぉ!!」
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3:名無しNIPPER
2017/05/22(月) 22:56:19.82 ID:kn3gGM8E0
私は絵本が好きです。プロデューサーさんにスカウトされるまでは、私は絵本作家になりたかったんです。正直、まだ絵本作家という夢をまだ諦めてません。
で、このノートには私の考えた絵本の下書きが書きためてあって…。絶対に、絶対に他の人には見せられません。
恥ずかしいとか、じゃなくて。本当に、本当に、見せるわけにはいけないんです。特に、プロデューサーさんには。
「どんどん雨風がひどくなってるな…乃々ちゃん、もうちょっと待っててね、あとちょっとだから。」
「は、はい…。」
昨日、うついうっかり机の下にノートを忘れてしまったせいで、こんな天気にもかかわらず取りに来る羽目になっちゃいました。誰も居ないと思ったらプロデューサーさんがいて、仕方ないから素早く定位置に入り、ノートをガードするようにしました。
そして、帰ろうとしても…。
「プロデューサーさん、まだですか?」
「あとちょっと。」
来るときは電車だったんですけど、今は悪天候のせいで止まっちゃってて。帰りはプロデューサーさんが車で送ってくれることになったんですけど…。
「…まだですか?」
「あとちょっと。」
さっきからずっとこう。同じ質問を同じ言葉で返されてしまいます。
「ごめんね、キリがいいところまで待ってて。」
さっきからずっと、机の上でタイピング音と、クリック音が止まらず鳴り続けています。
「…だいたい、プロデューサーさんは働き過ぎなんですよ…今日だって、プロデューサーさん以外、誰も来てないじゃないですか。」
『働き過ぎ』、常々私はそう思っています。私が知る限り、プロデューサーさんが休んだ日なんて、これまでに片手で足りるほど。いつ倒れないか、私は心配です。
「プロデューサーさんは…いつも真面目に仕事してるし…たまには休んだ方がいいと、もりくぼはそう思います。」
「ははは…心配してくれてありがとう。でも、要領が悪い僕みたいなのはこういうときでも頑張らないといけないんだ。それに、次の乃々ちゃんの仕事のために少しでも自分の他の仕事を片付けておきたいしね。」
「うぐぅ…。」
そう言われると返す言葉がありません。仕方なく私はノートを胸に抱え、黙りました。
プロデューサーさんは今、自分を卑下するようなことを言ってました。でも、私は知ってるんですよ、他のプロデューサーさんやちひろさんが「あいつは真面目だ」とか、「いつも頑張ってる」って褒めてること。
だから、もうちょっと自信を持ってもいいと思うんですけど…。前まで仕事を辞めたがってた私が言うのも、あれですけど。
私は膝を抱えたまま、雨と風と、そしてプロデューサーさんのタイピング音に耳を傾けることにしました。
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