45:名無しNIPPER[saga]
2017/05/29(月) 01:15:35.97 ID:hMuE1s630
途中温泉旅館の看板とかもあって、千歌ちゃんとどう? なんて言いそうになったけど、野暮かなと思って胸にしまっておいた。
二人のために何かしよう、というのはそれなりに気を遣う。梨子ちゃんはそんな私をきっと見抜いている。
でも、落ち着かないのだ。そんなことでもしていないと、余計な事を考えてしまう。
バス1台がやっと通れそうな狭い道を越え、木々が開けた。
視界いっぱいに青空が広がり、遠くには陽の光を受けて白く霞んだ水平線が見えた。
「うわあ、見て! 梨子ちゃん!」
通路側に座っていた梨子ちゃんの服の裾を掴んだ。
「絶景……ね」
すぐに、バスが駐車場に停まる。私は待ちきれずに駆けだした。
「待って、曜ちゃんってば」
「早く早くッ」
バスにずっと乗っていたせいかよろめく梨子ちゃんの手を取ってやる。
「ほら、梨子ちゃん」
「ええ」
何組かの恋人たちが大きな手のモニュメントの前に立って、寄り添い合いながら展望していた。遠くまで見渡せる良いスポットだ。
手のモニュメントの隣に、『こいびとみさき といおんせん けっこん』と書かれた看板。
「結婚式とか、こういう所でしたら理想だよね」
「曜ちゃん、意外と乙女なんだ」
「そういう梨子ちゃんは?」
「私も」
「結婚式には呼んでよね」
肘で梨子ちゃんを小突く。
「そんなのまだまだ考えてないわよ」
「私も」
恋愛の終わりは、結婚なのかな。
千歌ちゃんの気持ちは、どこまで本気なんだろう。
「色々大変だと思うけど、千歌ちゃんと梨子ちゃんなら大丈夫」
私は根拠のないまま梨子ちゃんに笑いかける。
「ここってね」
と、梨子ちゃんが私の手を握って、青銅の小さな鐘のある方へ引っ張っていく。
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