286: ◆PChhdNeYjM[saga]
2017/06/15(木) 23:09:37.21 ID:r9yqUWKuO
――男さん。
頭の中で、名前を呼ぶ声がして。
俺は、目を覚ました。
顔を上げると、そこは女さんの病室だった。
脈拍を示す機械的な音が、病室内に連続して響いている。
「なあ、女さん……あれから、もう1年が経ったんだよ」
「もう春だよ。俺と君が初めて出会った、桜の季節だ」
「今日は二つ、報告があるんだ」
「一つは……君の書いた小説が、遂に出版されたんだよ」
「初週売り上げが、1万部を超えたんだ」
「これ、すごいことなんだよ」
「どうやら、口コミで君の本の面白さが広まったらしいんだ」
「でも、慢心しちゃだめだよ? 君はまだ、作家への道を一歩踏み出したに過ぎないんだからね」
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