252: ◆PChhdNeYjM[saga]
2017/06/07(水) 21:12:54.54 ID:YV0GDy2xO
女「お父さんは、私の事なんて……」
男「そんなことないよ」
男「最近、君のお父さんは、早く帰ってくることが多かったと思わない?」
女「……」
男「お父さんは、君の事を心配して、早く帰っているんだよ」
男「現に、君が発作を起こした時、傍にお父さんがいてくれただろう?」
女「それは……そうですが……」
男「お父さんに心配をかけない方がいい。……さあ、帰ろう」
女「……ごめんなさい。やっぱり嫌です」
男「どうして?」
女「確かに、貴方の言う通り、運よくドナーが見つかって、手術ができるかもしれません。その結果、私は助かるのかもしれません」
女「……でもそれって、限りなく小さな可能性ですよ?」
女「今、国内に、心臓移植を必要としている人が何人いると思います?」
女「……600人弱です」
女「それだけの人が、私と同じように、心臓移植をしなければ死んでしまうんです」
女「それだけ多くの人達に、公平にドナーが見つかると思いますか?」
女「普通、あり得ません」
女「心臓移植を必要とする患者さんの半分は、1年以内に亡くなってしまうとも言われています」
女「分かるでしょう……私が助かる可能性は、限りなく低いんです」
女「運よく私が助かったとしても、そのせいで、多くの患者さんがドナーが現れないまま亡くなってしまうんです」
男「……それは、君のせいなんかじゃないよ」
女「いいえ。私だけが助かって、それでいいはずがないんです」
女「だから……だからね。私だけが助かるわけにはいかないんですよ、男さん」
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