237: ◆PChhdNeYjM[saga]
2017/06/03(土) 21:58:43.49 ID:xvaQaTKyO
――同時に、気がついたことがあった。
女さんの身体は、日に日に細くなって、弱々しくなっていた。
一見、昨日と比べて、今日の女さんは何も変わっていないように思える。
だが、二日前、三日前……遡っていくごとに、その変化は確実に彼女の身に現れていた。
男「女さん」
女「はい」
男「……大丈夫?」
彼女の表情が、一瞬だけ曇ったように感じた……が、気のせいだっただろうか、いつもの笑顔に戻っていた。
女「はい。身体の具合は、すこぶる好調ですよ」
この時ほど、人の心が読めたならと考えたことは、今までの人生で一度たりともなかった。
男(自分本位で生きてきたツケが、こんな所で回ってくるなんて……)
もしかすると、これからもずっと、彼女は死なないのではないだろうか。
彼女の余命が半分に短くなったなんて、医者の誤診に過ぎないのではないか。
だって、こんなにも明るい笑顔を見せるんだから。
ひょっとしたら、これからもずっと、何十年も生きるであろう人々よりも、彼女の方がずっと生命力に溢れているんじゃないだろうか。
そんな願望が、幾度となく俺の脳内を過ぎるのだ。
だが……願望は、現実ではない。
そうであると、分かっていても。
突き付けられた現実は、俺にとって、余りにも非現実だった。
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