12:名無しNIPPER[saga]
2017/05/28(日) 16:56:28.44 ID:5eIwWQUS0
【2年前】
「沼の底から 泡がいくつもあがってきた」
「兎と杵の休火山などもはっきり映し」
「月だけひとり。動かない」
「ぐぶう」
「と一と声。蛙がないた」
黒板の前で、草野心平の『河童と蛙』、を音読し終えた僕らの班は、拍手を受けて席に戻っていった。
班ごとに音読をするという授業内容だった。
"ぐぶう"
4人の班で3分以上の音読をする中、僕が喋ったのはその一言だけだった。
席に戻ると、俺ではなく、B地区出身の駒田君が不満を言った。
「『立った。立った』しか言ってないんだけど僕」
女子二人を見ると、クスクス笑いを堪えていた。
「思春期だもんね」
C地区出身の女子が言ったその言葉に、俺の幼馴染である引森は一層クスクス笑って、顔を赤らめてさえいた。
これだからC地区出身のノリは嫌なんだ、そう心につぶやいて、竜神まきなのクスクス笑いを授業が終わるまで聞いていた。
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