197: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2017/05/18(木) 18:29:51.35 ID:qcFlP+vx0
明らかに車両移送の対象者なのに、兵士の誘導に気づかず虚空を見つめ虚ろな顔つきでふらふらと歩いて行く老人がいる。
警官に抱え上げられてトラックに乗せられながら、姿がない父と母を呼び泣き叫ぶ少女がいる。
かける言葉が見当たらず途方に暮れる海兵隊の隊員に縋り付き、どうしてもっと早く来てくれなかったのかと、怒りも悲しみもない淡々とした口調で問いかけ続ける中年の男がいる。
黒焦げの、かつて赤ん坊“だった”物体を胸に抱き、俯く夫の横で延々と子守唄を歌い続ける母親がいる。
それらの光景は、俺たちが「救った」人々よりも、「救えなかった」人々がどれほど多いかを突きつける。
('A`)「………」
作戦の成功によって胸の内に芽生えていた微かな高揚は、消えていた。
無論、出来うる限りの最善を尽くしたという自負はある。作戦成功に伴う南側の主力艦隊打撃がなければ、今ここに逃げてきている人々すら命を落としていたかも知れないのだと解ってはいる。
それでも、無い物ねだりだと解っていても。
例えば自分が艦娘のように単騎で深海棲艦と戦える力を持っていたとしたら、より多くの命を救えたのは事実だ。
(//‰ ゚)「奴らは、あの腐った深海魚共は俺の二つ目の故郷を灰にした。二つ目の祖国の友人達を殺した。その報いは必ず受けさせる」
俺の横で、サイ大尉のそんな呟きが聞こえてくる。巨大な掌は満身の力で握りしめられ、食い込む爪のせいで僅かに血がにじんでいた。
(//‰ ゚)「そろそろ行こうぜドク。奴らをぶちのめすための作戦会議だ」
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