【デレマス】「先輩プロデューサーが過労で倒れた」
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30: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2017/05/07(日) 01:03:40.34 ID:LHxNoXTK0
「……そう言うわけで、これからよろしく」

 俺がプロデュースするアイドル全員が揃った、初顔合わせの日。
 美城プロダクションのミーティングルームでユニット活動の概要を伝え、最後にそう挨拶した俺に対して、五人のメンバーはそれぞれの反応を返してきた。

「がんばりましょうっ! いよいよですね! 燃えてきましたーーー走りますか!」

 音を立てて椅子から立ち上がったのは茜だった。鼻息荒くしているところを隣の比奈になだめられている。

「茜ちゃん落ち着いて、走らなくていいっス……いやぁ、なんか実際アイドルになるって……実感わかないっスね、まだなんにもしてないっスけど」

 比奈は茜の服の裾をひっぱりもう一度椅子に座らせながら、のんびりと言った。
 比奈は部屋でみたのと同じ、野暮ったいジャージ姿だ。アイドルっぽさのかけらもない。

「私……皆さんに迷惑だけはかけないようにしないと……」

 白菊ほたるは、両手を胸の前でぎゅっと握りしめ、足元のあたりに視線を落として、不安そうにしている。

「まぁまぁみなさん……とりあえず、お近づきの印と、ユニット活動開始を記念して、眼鏡どうぞ!」

 上条春菜は立ち上がると、カバンから次々に眼鏡を取り出し、その場にいる全員の前にひとつずつ並べていく。
 色や形が違う。メンバーに合わせて選んできたのだろうか……俺の分もあった。

「ちょっと、待ってよ」

 すこしとげのある声がして、眼鏡を配る春菜の手が止まった。部屋の全員が声の主のほうを見る。
 関裕美が、真剣な眼で俺を見ていた。

「いきなりプロデューサー交代って言われても、納得できない。私のことをスカウトした人は、どこにいっちゃったの?」

「あー、っと、その、怒らないでほしいんだが」

「怒ってない」

 裕美は俺の声を遮るように言った。言ってから、俺のほうを見ていた目を逸らす。
 唇をぎゅっと閉じて、怒りとも哀しみともつかない表情で壁のほうを見つめていた。

 ほかのメンバーは不安そうな顔でこちらを見ていた。
 茜はどうしたらいいのかわからないらしく、俺と裕美とを交互に見て困っている。

「……もともとお前たちをプロデュースする予定だった先輩は、過労で倒れた。だから、俺が引き継ぐことになったんだ。急ですまないが――」

「か、過労……」ほたるが消え入りそうな声で言う。「……やっぱり私が、いるから……」

 裕美とほたるを中心に、ミーティングルームには重い空気が流れ出す。
 俺は困惑した。裕美が先輩の不在で不安なのはわかる。が、ほたるはどうして必要以上に沈んでいるのか。

「いや、だからその」俺は明るい声を作るように努めた。「先輩に比べたら力不足かもしれない。けれど、先輩が戻るまでのあいだは、きっちりやるつもりだから」

 俺は記憶を探った。先輩ならこういうときにどう言っただろうか。俺がプロデュースするから、安心しろ、だったか。



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