【デレマス】「先輩プロデューサーが過労で倒れた」
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16: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2017/05/01(月) 22:54:36.55 ID:z+wGLY660
「……ついてこなくてもいいんだぞ」
俺の言葉に、茜は大きく首を振った。
「いえっ! マネージャーも最初は雑用から! なんでも見学して慣れたいんです!」
茜は鼻息荒くそういって、腰のあたりで両手に握り拳を作り気合を入れる。
俺たちは荒木比奈の自宅へと赴いていた。
一人で行くつもりだったが、茜がぜひ着いて行きたいと言いだしたのだ。
プロデューサー業の見学をしてもしかたないとも思ったが、俺は同行を認めることにした。
俺一人でも十分不審者扱いされるだろうだが、茜が加わればより挙動不審だ。
比奈が怪しんでスカウトを断るかもしれない。そのほうが俺の仕事は楽になる。
そんな俺の思惑など知らず、茜は移動のあいだじゅう、ずっと支給された入館証を眺めては嬉しそうにしていた。
比奈の家の前までたどり着き、俺は表札の部屋番号と手元のプロフィールシートとを対照した。
三〇二号室。ここで間違いない。
事前に記載された電話番号に電話をしてみたが、応答はなかった。
最近では知らない番号の電話には出ない人も多いというから、おかしなことではない。
自宅に不在なら、スカウトを試みたが失敗したということにできる。
しかし、誰かしら在宅はしているようだ。室内は電気がついているようだったし、玄関の横にある電気メーターはぐるぐると高速回転している。
「ここですね! さあ、プロデューサー! あらたな仲間との出会いです!」
「わかったわかった、落ち着いてくれ」
茜をなだめ、出ないでくれよ、と願ってから、インターフォンのスイッチを押す。
数秒経ったあと、部屋のおくからドタドタと足音が近づくのが聴こえ、それから玄関の扉が勢いよく開いた。
「突然の訪問、失礼します、わたくし……」
「あああああやっと来たっスね! 待ってたっス!」
鬼気迫る声で俺の挨拶を遮ったのは、確かに先ほど確認したプロフィール写真の女、荒木比奈その人だった。
野暮ったいジャージまで写真と同じだが、実物の比奈の目にははっきりと濃いくまがあらわれている。寝不足なのだろうか。
「時間がないっス、二人とも、まずは中に入って!」
「は……?」
比奈は呆気に取られる俺たちにギラギラした目線を送ると、俺の腕をつかみ、部屋の中へと引き入れようとする。
「ちょ、ちょっと」
「とりあえず中で“すかうと”のお話でしょうか? 行きましょうプロデューサー! おじゃましまーす!」
茜が元気よく挨拶し、俺を比奈の自宅の玄関へと押し込んだ。
「そう、“すけっと”待ってたっス! どうぞっス!」
「いやちょっと、おい待てって!」
俺の願いは一切聞き入れられないまま、入ってきた玄関の扉は茜によって閉じられた。
茜は鍵と、ご丁寧にチェーンロックまでかける。
「ちらかってるっスけど、締め切り前ってことで勘弁してほしいっス」
比奈は廊下を奥の部屋へと歩いていく。俺も仕方なくあとに続き、さらにその後ろから茜がついてきた。
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