374:名無しNIPPER[sage saga]
2017/05/23(火) 12:33:17.09 ID:JcVHvI7Q0
〜線路沿いの道路〜
自宅へ帰る道を歩きながら、仲村創はポケットの中にあるタイガの
デッキを固く握りしめていた。
二日前、香川の家でこれからの方針を話し合った際、信じられない事に
自分の口から東條のデッキを譲ってくれと言う言葉が香川に向かい、飛び
出したのだった。
驚いた事に香川も東條のデッキを使うつもりだったらしい。
しかし、香川の方がサイコローグもオルタナティブも自分より遙かに
上手く使いこなせるという理由で無理矢理自分がタイガのデッキを使う事を
認めさせたのだった。
「はぁ...俺もバカだよな」
「張り合う相手の東條はもういないってのにな...」
いけ好かない奴のデッキを後生大事にしようとする自分の気持ちが
今でも理解できない。だけど、今まで東條へ抱いていたどの感情よりも
ずっとしっくりくる想いが今の自分の心の中に溢れている。
(東條。お前の力を貸してくれ)
疑似ライダーとして今までライダーとしての戦いに関わってきた自分と
違い、東條は最初からライダーとしての覚悟を決め、ライダーバトルに
身を投じていた。
アイツの英雄になるという考え方は分からない。理解すら出来ない。
だけど、
「待ってろ神崎。英雄(おれたち)がお前の野望を必ず打ち砕く!」
固く握りしめた拳と共に決意を新たにした仲村は、ミラーモンスターが
現れる前の独特の金属音を耳にしたと同時に、ポケットからデッキを出す。
「お前、仲村創だな」
「秋山、蓮....」
全身を黒いコートで覆った男がバイクから降り、剣呑な視線で自分を
睨み付ける。以前ミラーワールドで遭遇した時と比べ、遙かに纏う空気が
重々しく、より刺々しいものへと変化している。
「戦え」
「ああ」
夕日が落ち、夜が星を引き連れる時が来た。
この戦いが終わるとき、どちらか一人が命を落とす。
そんな漫然とした予感が仲村の脳裏をよぎった。
「変身!」
「変身!」
バイクのサイドミラーにデッキを翳した二人のライダーは、吸い込まれる
ようにして戦場をミラーワールドの中へと移したのだった。
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