260:名無しNIPPER[sage saga]
2017/04/28(金) 23:03:56.16 ID:xchiMuX50
「裕太...」
デスクの傍らに立っている写真立てに写る最愛の息子と妻の笑顔が眩しい。
神崎士郎はライダーバトルへの介入を止めない自分への牽制として、
最愛の家族を人質に取るはずだろう。
英雄<じぶん>の覚悟を鈍らせるだけの例外的な価値が妻と息子にはある。
おそらく、そうされてしまえばきっと自分は剣を振るう事を躊躇し、
英雄ではいられなくなるだろう。
だが、例えそれで自分が命を落としたとしてもきっとここにいる三人が
自分の遺志を引き継いでライダーバトルを、ひいてはミラーワールドを
閉じてくれるだろうと香川は信じる事が出来た。それだけが救いだった。
15分立っても香川が姿を現さない事に不信感を抱いた仲村が研究室の
扉を開いて入ってきた。
「先生?」
「ああ、すいませんね。ちょっと教務課と電話で話をしていました」
「そうですか。車、出してるんで早く行きましょう」
「ええ。カーナビはついてますか?」
「勿論ついてますよ」
(何を迷っている。香川英行...お前はこうなることを予測していた)
(英雄として生きるのなら、その業も宿命も受け入れなければならない)
(だが...私は、この矛盾に答えを出せない...)
きっと、この究極の二律背反こそが英雄になろうとした自分がこの先に
背負っていかなければならない十字架なのだろう。
そう自嘲的な笑みを浮かべた香川は研究室を後にしたのだった。
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