15:名無しNIPPER[sage saga]
2017/04/23(日) 23:59:33.64 ID:p+cBhhHk0
第二話 鏡の中の怪物
あれから三日後、満の日常に特に変化はなかった。
掛け持ちのバイトに合わせた不規則な毎日を送りながら、機械的に
生きていくような、そんな日々に埋没し始めている実感が愛おしい。
鏡の向こうからは未だに自分を見つめる視線を感じるが、それを
無視させるほどの集中力を仕事がもたらしてくれる。
「おう、佐野!今日は珍しく真剣じゃねぇか!」
「あ、どうも監督。いや〜真剣に仕事するのも悪くないですね〜」
「なんて言ったって、後もう少しでこの工事終わりますからね」
「僕はアルバイトですけど、なーんか頑張ろうって思えてきちゃって」
「こいつ!思ってもないことをべらべらしゃべりやがって」
「まぁいい。もう上がりだろ?ラーメン奢ってやる」
「本当ですか?いや〜嬉しいです。ありがとうございます!」
「一時間後に駅前のラーメン店に集合な?」
「はいっ!」
朗らかな笑みを浮かべた五十歳の工事現場の監督はそう言い残して、
しっかりとした足取りで更衣室へと向かっていった。
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