171:名無しNIPPER[sage saga]
2017/09/19(火) 15:05:47.76 ID:hdqJBox50
そうかあの日以来なのか。ふいに私の胸の奥がひどく痛んだ。
私は大井さんと話すことができなかった期間、無意識に避けていた時間が悲しかった。
突然当たり前にあって物がなくなった。しかもそれは私にとって唯一無二の存在で、心の支えだったものだ。
そんなありきたりな言い伝えなんか、耳が痛くなるほどみんな聞いている。そんなこと当たり前だ、だから大切にするんだ。なんて。
大切にしてたって、いつかは失くなる。
物は壊れ、人は変わり、真っ直ぐ引いたはず直線だって少し曲がっていれば、気がつかないうちに明後日の方向に向かっている。
普遍という言葉は嘘偽りで塗り固められ、希望にすがる他ないんだ。
私の頬をさする手がふと止まった。
大井「それで、急に何しにやってきたんですか?」
私は生唾を飲み込み、その時が来たんだと覚悟する。大井さんの柔らかな太ももからゆっくり離れ、自然と正座をし、大井さんと向き合う。
大きく、深呼吸。
提督「今日は、大井さんに、大事な話しがあって来ました」
私の手が無意識に反対の手の爪を弄ろうとした。それに気がついた私は握り拳を作り、手のひらに爪を食い込ませる。
提督「あの日、大井さんに言わなくちゃいけないことを、言います」
私は視線を上にあげる。そして大井さんのしなやかな栗色の髪の毛と同じ、透き通る瞳が映る。
汗で背中に張り付いたシャツが、さっきまで冷たかったのに熱を帯び、私を急かしはじめた。
215Res/148.01 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20