531: ◆FlW2v5zETA[saga]
2018/07/20(金) 03:49:30.08 ID:FKWrXIy5O
その後少しの間は、フリーの記者として食いつなぐ日々でした。
機を同じくして、知人から小説の執筆を勧められたんです。
仕事の暇を見ては書き続け数ヶ月。それがある大きな賞を取り、私のデビュー作となりました。
その小説は…死の淵から生還した軍人の辿る、苦悩と再生の物語。
…デビュー作以降も、次々と作品を世に出しました。
助からない事故に遭遇した記者の、最期の20分。
幼い少女が辿る、残酷な運命の架空戦記。
精神を壊した青年と、その恋人が辿る結末。
愛を欲していただけの、殺人鬼の少女の世界。
どの作品も、世間からすればヒット作となりました。
映画化やドラマ化もされ、側から見れば私も売れっ子になれたのでしょう。
でも私にとっては…物語としてでも、あの人達が生きた証を残す事。そちらの方が余程重要でした。
処女作の刊行から4年を経た今でも、本屋さんに置かれている。それだけ多くの人の手に、彼らの生きた跡が渡っている。
売れた事以上に、その事が何より嬉しかった。
記者として復讐を果たした今、私が生きる意味はそれしか残っていませんから。
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