青葉「けしの花びら、さえずるひばり。」
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4: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/04/11(火) 02:59:07.05 ID:2/pFdI7xO

“書類の印刷忘れちゃったなぁ、戻らなきゃ。”

ある夜の事でした。
1日の終わり、仕事の抜けに気付いて執務室に向かったんです。
それで扉の前に立つと、どこかで聴いた歌が聴こえて来ました。

“あれ、この曲確かお父さんが聴いてた…。”

その歌声は小さい頃、父が車の中で掛けていた音楽だった事を思い出して。
不思議に思いながら、執務室の扉を開けたんです。

“司令官…?”

司令官のそんな顔を見たのは、数少ない事でした。
無表情なんです。いつもの微笑も無く、まるで魂が抜けたようで。
でもいつもと違うように見えたのは、それだけじゃありませんでした。

“目が遠くに行ってる…疲れてるのかな。”

ノックをしても返事も無かったし、ぼーっとしていて、青葉にも気付かないまま。
思わず声を掛けて、やっと彼はこちらに気付いてくれました。

「…ああ、失礼した。忘れ物かい?」

気付いた瞬間には、やっぱりいつもの顔。
いざ変化するのを見ると、貼り付けた笑みに見えてしまって…その時、少し彼が怖くなりました。

「随分古い曲ですね、お好きなんですか?司令官の世代じゃないと思ってましたけど…。」

「ああ、思い出があってね。青葉もよく知ってるな。」

「お父さんが聴いてたんですよ。何て曲でしたっけ?」

「天国旅行。」

「あー!確かそんなタイトルだった!
…ところで司令官、この曲の思い出って何でしょう?気になりますねえ、お聞きしてもよろしいでしょうか?」

そうやっていつものノリで尋ねたのですが、せいぜい思い出話ぐらいしか返ってこないだろうと思っていました。

「……青葉、天国ってあると思うか?」

ところが返ってきたのは思い出ではなく、素っ頓狂な質問でした。




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