379: ◆FlW2v5zETA[saga]
2018/02/20(火) 06:29:13.47 ID:UQb2c9ARO
いつかのとある春の日。
小川沿いに続く桜並木を、一人の女が歩いていた。
ひらひらと舞う花びらは、彼女の黒髪をより色濃く映えさせる。
しかし春風の音は、イヤホンに阻まれ彼女の耳には届かない。
だが、桜吹雪の中、彼女の中には違う風音は響いていた。
いつかこの小道を歩いていた頃の風が。
“……あの時は確か、もう葉桜だったわね。”
甦るのは、まだ彼と付き合い始める前の、デートとも言い難いような散歩の記憶。
葉桜ではあれど、その頃も今日のように花びらは舞っていた。
違うのは、その頃はふたりでいたと言う事。
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