青葉「けしの花びら、さえずるひばり。」
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372: ◆FlW2v5zETA[saga]
2018/02/10(土) 13:06:28.26 ID:kxRu56uZO
行為の最中に歯や爪を立てるのは、私なりの独占欲の表れでした。
でも、私が与えた痛みや傷が彼の感情を呼び戻したのは…今はもう、ふたりの中では確かな事でしたから。

噛み付いた血の味だけは、あんな事が起きた今でも怖くない。
爪の間に食い込む肌も、ぬるりとした血の感触も、何もかも愛おしくて。
命を確かめ合うような、そんな瞬間でした。

それはかけがえの無いもの。
わたしだけのもの。

でも……わたしだってほしい。

その時私の中に瞬いた欲望は、とある恐怖の裏返しだったのかもしれません。


「ジュン……背中、引っ掻いて…血が出たっていいよ。

私をジュンだけのものにして…。」


肌に走る痛みさえ、とても甘いものに思えました。

背中を滴るのは、私の命。
指先や舌に残るのは、彼の命の感触。

血と血が混じり合うような痛みは、ここにふたりが生きている事を教えてくれる。

もう一生、私からこの人の跡は消えない。

それは今夜芽生えた『あるお願い』を、彼に伝える為の傷。


「…ふふ。傷、残っちゃったね。」

「…大丈夫か?」

「うん!これでずーっと、ジュンと一緒だもん!
………ねえ、お願いがあるの。」

「………何だ?」

「もしね、私が沈んで深海棲艦になっちゃったら…鹵獲して欲しいの。
それで弱らせるだけ弱らせて…もう何も出来なくして……。」


くらいくらいよくぼうに、どこまでもおちていく。
きっとかなしくさせてしまう。

それでもいわずにはいられない。




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