207: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/10/05(木) 05:26:29.00 ID:zHmp11Q90
「じゃ、おやすみー。最終回まで録ってあるからね。」
「うん、また今度ー。」
青葉の部屋を離れ、彼女は隣の自室へと戻る。
か細い鼻歌が紡ぐのは、先程観ていたドラマのエンディングテーマだ。
部屋の照明も入れず、彼女はそのままデスクのライトのスイッチへと触れる。
薄明かりが灯る部屋は、当然机以外はあまり強く照らされていない。
「〜〜♪」
彼女が青葉の部屋を訪ねる事はあれど、青葉が彼女の部屋を訪ねた事は、実は今まで一度も無い。
青葉の方から誘いを掛ける時でさえ、自然と青葉が自室へと招く程だった。
灯台下暗し。
青葉は彼女の人柄については深く知るが、そこに付随する諸々については実は疎い部分もある。例えば些細な趣味の事。
机と壁には、木枠にアクリル板が貼られた箱が幾つか飾られている。
そこに入っているのは、色とりどりの羽根。
蝶の標本収集が、彼女のささやかな趣味であった。
それは買い集めた物や、『自身で採集、作成したもの』も含まれている。
“上にいくほど傾いたら、結局落ちちゃうもんね。”
机の真正面には、二つの額が飾られている。
一つには、いつか青葉と二人で撮った写真が。
その隣、もう一つの額には。
“………だからその時が来たら、受け止めてあげなきゃ。”
いつかの駐車場で殺虫灯に撃ち落とされた、羽根を焼かれた蛾の標本が飾られていた。
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