196: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/09/27(水) 08:22:39.52 ID:NsTJuwti0
しばらくして、やっとお姉ちゃんと連絡を取る事が出来た。
お姉ちゃんの無事も涙が出るぐらい嬉しかったけど、彼の無事については不安なまま。
電話越しに、私は意を決して無事を尋ねた。それで帰って来た言葉は…。
「……ええ、『救出』されたわ…。」
その一言で、全てを察した。
病院に駆け付けはしたけれど、面会許可が下りたのは、親族以外はお姉ちゃんだけ。
『恋人の妹』に過ぎない私は、ICUの扉の前で待つ事しか出来なかった。
何分経ったろう?時間にして15分もないのに、避難した日よりもずっと長く思えた。
ようやく開いた扉からお姉ちゃんが出て来た時、私は思わず駆け寄ってしまっていた。
「……命は、助かったわ。」
「………よかった…。」
「でも、部隊の方は彼以外助からなかったみたい……起きた時、なんて言えばいいか…。」
「…………そう…。」
告げられた言葉のせいで、素直に喜ぶ事は出来なくなった。
意識を取り戻した時には、彼を待っているのは厳しい現実。支えて行かなきゃ…『私達』で。
何日かして、彼はようやく意識を取り戻した。
だけど一般病棟に移れたのは、そこから更に5日後。あの日から顔を見れるまで、約10日を要した。
許可が下りてるお姉ちゃんは、毎日僅かな時間でもお見舞する事が出来たけれど…私はその間、何も出来なかった。
やっと面会謝絶が解けた日は、学校も再開した後。放課後、急いで病院へ向かった。
ノックをして、ドアを開ける。
ノブを握る手は、歓喜で震えていた。顔を見た瞬間、抱き付いてしまいそうなぐらいだ。
まるで死んだように窓の外を見る、その姿を見るまでは。
その日までお姉ちゃんは、私の前では無理に微笑んでいるように見えた。
恋人が怪我をしたんだもの、毎日気が気でないはず。
でもそれは怪我だけじゃなかった事を、私はそこでようやく知った。
姿を見ただけで、もう分かってしまったの。
彼はもう、前の彼ではなくなってしまった事が。
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