青葉「けしの花びら、さえずるひばり。」
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195: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/09/27(水) 08:21:25.15 ID:NsTJuwti0
何も変わらない日々が続いた。それはもう、あまりにも平穏すぎるぐらいに。
だけど彼がお姉ちゃんを訪ねて家に来るたび、私は夜、一人でこっそりと枕を濡らしていた。

ふたりとひとりの、どうしようもないぐらい幸せな時間。
身勝手な気持ちでふたりの幸せを壊せば、ひとりの私の幸せも壊れてしまう。

その葛藤の中で、やがて私の中の醜い想いは、いつしか諦観に変わっていった。
叶わない事は、忘れてしまうのがいいんだ。
それで趣味を増やしてみようとしたり、仲が良い方だった男子との交流を増やしてみたりした。
向こうにも何となくそんな意図が伝わってたのか、結局付き合うまでには至らなかったけれど。

諦める事が幸せで、その為の努力をしていたような。そんな毎日だった気がする。
段々受け入れられるようになって、少しずつだけど、前に進めたようなフリをしていた。

そんな毎日の中、よく晴れたある日の事。
未知の化け物が世界中に現れた。

メディアから伝わる事態に恐怖を覚えたけど、何より彼は軍人だった。
軍の事務員であるお姉ちゃんは、出撃する瞬間を見守っているはずで……様々な不安が、胃の中に鉄を突っ込まれたような感覚を与えた。

事が起きていたのは、本州から随分離れた沖の方。
それでも避難指示が出て、私の地区は近くの小学校へ逃げ込んでいた。

窓から見える空は、嘘みたいに快晴だ。爆発音だって無い。
でも何処かで彼は戦っていて…実感を上手く持てないまま、ただ無事を祈る事しか出来なかった。

日が沈んで、夜が来て、また昨日と同じような朝が来た。
一睡も出来ないまま、化け物の撤退の速報と共に避難が解除された。
外に出てみたところで、戦火の跡なんて無い。何も変わらない街だ。
でもこの時、私は感じていたの。


“この世界の何かが、きっと壊れてしまったのだ”と。





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