176: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/09/05(火) 16:23:05.91 ID:XFQ5vfxS0
4年前、快晴の日。とある海は血に染まっていた。
残骸と原型を留めていない肉片が浮く中、唯一まともな状態の死体が一つ。
いや、死体ではない。その男は、『生きてだけはいる』のだ。
しかし開けられたままの目に意識はなく、表情も虚脱したもの。
辺りは波音のみ。うめき声すら聞こえぬ中、不意に男の頬が動く。
「………ははははははははははははっ!!!!!!!」
狂気めいた笑い声が、波音を塗りつぶす。
だがその声の主の目に、未だに意識は戻らぬまま。
自身がケタケタと笑い転げている事でさえ、彼が気付く事は無い。
数十分後、救助部隊が現場に駆け付けた時には、辺りは再び静寂に包まれていた。
彼もまた、いつの間にか死んだように目を閉じている。
故に、誰もが彼を、ただの生存者としか思う事は無かった。
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