113: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/05/10(水) 14:33:14.95 ID:nW+Vca+e0
「司令官…少しだけ、嫌なお話になるかもしれません。
青葉の叔父さんは、ローカル誌の記者だったんですよ。
最初の戦闘の前、民間船が何隻か襲われたじゃないですか?
その船の中に、叔父さんも取材で乗ってて…そこで亡くなってしまいました。
遺体の手に、SDカードが握られてたんです。
ビニールに包んで、しっかり握り込まれていて…死期を悟って、咄嗟に包んだんでしょうね。
不幸中の幸いですが、叔父さんの遺体はすぐに回収されて…間近で深海棲艦を捉えた写真として出回ったのが、SDに残されていたものなんです。
叔父さんはよく言ってました、“それが街の行事であれ事件であれ、事の本質を伝えるのが俺達の仕事だ”って…。
だから…仇を討ちたかったですし、知りたかったんです。
前線に立つ事で今起こってる事を見極めて、そして自分の手で、この悲劇を終わらせたいって。
それでいつか、この戦争に関する記事か本を書きたいって思ってます。」
「そうだったのか…僕も、君が果たせるように頑張らないとな。」
“終わらせたい悲劇は、増えちゃいましたけどね”とは、言えませんでした。
叔父さんの事だけじゃなく、死んでしまった仲間や、司令官自身の事。
青葉にとって、終わらせたい事は増えていました。
“寂しいや悲しいと感じられない事が、寂しくて悲しい。”
彼が手首を切った時、そう笑っていたと扶桑さんは言ってました。
喜怒哀楽の全部…嬉しいや楽しいも、本当は彼の中には無いんでしょうか?
青葉に向けてくれる顔も、もしかして…。
一瞬気が暗くなりかけて、すぐにそれを追い出しました。
ダメダメ。青葉が暗くなっちゃ、照らしてなんてあげられないんだから。
そうだ、質問を変えさせてみよう。
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