17: ◆1dX/SFXJz6[saga]
2017/05/25(木) 20:07:22.93 ID:CVZp0XRX0
エプロンをした女性、ヤヨイの母親である彼女が両手を腰に当て、ため息混じりに言う。しかしそのため息はヤヨイとは違い呆れたようなものだ。
「・・・・・あのねママ。常識的に考えて私が1人で旅とかできると思う?」
「いまどき旅してない子のが珍しいってのよ。どこの常識で語ってるのあんた」
「私の常識」
「アホか」
うつむきながらスプーンでくるくるとスープをかき混ぜるヤヨイの脳天に、母のチョップが炸裂した。
「それに1人で旅しろなんて言ってないでしょ。ポケモンが一緒なんだから」
「そうだけどさ……」
「別にポケモンリーグ目指せってわけじゃないのよ? こんな田舎町に引きこもってたら将来絶対苦労するから、経験のために旅にでも出たらって言ってるの」
「それは分かってるけどぉ・・・・・・」
「もーいつまでもうじうじ言ってないで!さっさと食べて出発の準備しなさい!ナマカマド博士の迎えが来ちゃうわよ!」
母が言い終わると同時、ピンポーンというインターホンの音が鳴り響いた。
「ほらもう来ちゃったじゃない!早く準備するのよ?」
「今あけまーす」と母が玄関の方へ向かっていくのを確認したあと、ヤヨイは再び深いため息をついた
――数分後、スープを飲み干しバッグを背負ったヤヨイが、暗い表情のまま玄関へ赴く。
「え?あなたがナマカマド博士のお迎え?」
そこに立っていたのは、いや、立っていると言っても人間のように直立しているのではない。四つの足を地に着け、下向きだったヤヨイの顔を見上げるようにしていたそれは、黒い鬣と鋭い眼光を持つポケモンだった。
「レントラーっていうのよ。あなたがマサゴタウンのナマカマド研究所まで送ってくれるのよね?」
レントラーと呼ばれたポケモンは、無言でこくり、と頷いた。
「よ、よろしくね・・・・・?」
恐々と頭に触れようとしたヤヨイの手をかわしたレントラーが、くるりと踵を返す。
「着いて来いってさ。じゃあ気をつけて行ってらっしゃい」
「……いってきます」
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