八幡「ゲームが完成しそうだからすぐこい?」 ルナ「ルナのゲームだよ」
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◆SqZQSXA.b2
[saga]
2017/05/26(金) 01:11:49.58 ID:G+dDNyXt0
笑いたくもないときに笑うなんて,空しくて,苛立たしい.
来訪者の目まぐるしい表情の変化に気づいていないファイターは,呑気に柵を掴んで,引っこ抜いた.
ファイター「ほら,ここの柵だけ簡単に抜けるようになっているんだ.
いわば,村の裏口だな」
天剣の乙女「ふむ.余計なお世話かもしれないが,この村の防護は,いささか甘いと言わざるをえないな」
彼女は,柵をちらりと眺めてから,村の中へ入った.
ファイターは柵を立てなおしてから,俺たちを先導する.
ファイター「へぇ,どんなところが甘いとみる?」
天剣の乙女「襲撃の第一波を抑える柵は,胸ほどの高さしかない.野盗相手ならそれでよいが,組織された盗賊,魔物群れの前では積み木も同然だ.
それに,物見やぐらにお前しかいないのは,妙だ.
これだけ薄い警備だと最低二人はいなければ,敵襲への対処と味方への警告はこなせまい.
なにより問題なのが,私たちをあっさり入れていることだ.
私たちの言葉を信用してもよいが,まずは照明のある正門へ案内するべきだな.
我らの背後に,どれほどの敵が潜んでいるか,想像してみろ」
ファイター「はははっ,あんたの慧眼には,恐れ入った.
だけど.ここ100年間,俺の知る限りこの村が襲われたことがないんだ.
・・・それ自体は問題なんだが,今はいい.
ほら,その理由である暴れ兎の彫像が見えてきた.あれは,この村の象徴なんだ」
家々の屋根ほどの高さがある,月明かりに反射する,黄土色の銅像を見つけた.
それは有象無象の家々の屋根から,大きな耳を持つ頭部がひとつ飛び出ていて,鼻の先を月へぴったりとむけている.
目もとには,ギザギザの傷が小さくだが刻まれていて,あれはもっとも害獣らしい幽霊を想起させる.
八幡(いやだ.見れば見るほど例の巨大兎と似ている気がする)
ファイター「あれは,もともと月に住んでいた兎なんだ.だから,届きもしない月に向かって飛び跳ねているんだ」
天剣の乙女「なかなか立派なものだ.あれだけの大きさの彫像は,腕利きの者にしかできないだろう」
八幡(嘘だラビットさんに付き従っていた,無頼漢のあいつがこの村の象徴なのか?
それが,村を守るということは,どういうことなの.あいつは.にんじん畑とかを容赦なく荒らしていそうなんだが.
そして,俺を追いかけていた兎は,ラビットさんの放ったモノなのか?)
頭の中で,疑問はいくつか形をなした,これから解決する必要があるだろう.
同時に.果たしてこれから宿に比企こもる余裕はあるのだろうか,という不安がよぎった.
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