八幡「ゲームが完成しそうだからすぐこい?」 ルナ「ルナのゲームだよ」
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32: ◆SqZQSXA.b2[saga]
2017/05/11(木) 00:48:53.99 ID:Rw0gf1c+0
天剣の乙女「それでは行くぞ。あるじは私にしっかりと掴まっていることだ」

八幡「あぁ」

彼女は、前傾姿勢になると軽快にスタートを切った。

果たして、それは神の御加護なのか、それとも人が鍛えた技術なのか。

彼女が急な傾斜や無秩序に立ちふさがる木々をすいすいと避けていく間も

大地を蹴る衝撃はほとんど伝わってこなかった。それでいて息切れ一つしないのだから頼もしい。

RPGでよくある事例として、今までさんざん苦しめてきた敵が味方になったとたん弱くなるというものがあるがこの世界では適用されないようだ。

良くも悪くも、ひとはそう簡単に変わらない。

天剣の乙女「…っ。あるじを追っていた者らしいのが、いるな」

八幡「分かるのか」

天剣の乙女「微かに、私とは別の足音がするのだ。それに、気分が悪くなる様な邪悪な気配がする。いま、その者は私の右側を、並走しているようだ」

八幡「このスピードに追い付けるって時点で、ただものじゃないな」

誰でも分かることを口に出す、愚かさといったら。

しかし、事実を受け入れるために言葉にすることは、有効な手立てである。

今や、彼女は現世における全力で自転車を漕いだときと同様の速度で、走っているのだから。

天剣の乙女「徐々に、こちらに近づいてきている」

彼女の声に、緊張がみなぎった。

みると、彼女の左手は、鞘に納められた剣の柄を握っている。

それから天剣の乙女が「くるぞっ!」と叫んで、左側に飛び退ったのと

俺が慌てて右へ向いたのは同時だった。

天剣の乙女「これは…動物霊か」

それを見たとき、言葉を失った。

だって、それは自分が探し求めていた人に近しいものだったから。

ピンク色の子兎が叢から飛び出し、忙しなく脚を動かしながら、こちらを見ている。

天剣の乙女「この程度なら簡単に蹴散らせようが、どうしたものか」

八幡「…」

天剣の乙女「あるじ」

八幡「ひとまず、近づけないようにしてくれ。いつ、爆発してもおかしくないからな」

天剣の乙女「…あるじは、ネクロマンサーについて知っているようだな」

八幡「ずいぶん昔に、それに会ったことがある。それだけだ」

天剣の乙女「あるじはネクロマンサーではないのだな」

八幡「ああ」

天剣の乙女「それなら、よい」

彼女は、左手に方向を転換していく。兎は、それ以上追ってこようとはしなかった。

その姿が叢に埋もるようにして、見えなくなってからも、頭を持ち上げて視線をさまよわせた。


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