八幡「ゲームが完成しそうだからすぐこい?」 ルナ「ルナのゲームだよ」
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◆SqZQSXA.b2
[saga]
2017/04/27(木) 01:29:46.12 ID:J6qLwPr90
砂利の上を、音を鳴らして歩いていく。
徐々に背の低い草は姿を消し、ぽつぽつと現れた樹木が傘を広げるようになる。
煤けた茶色の土壌が砂利を飲み込み、ここは触れられざる自然の領域だと主張する。
実際、どんどん道が細くなり、歩くには苦労する。
八幡「ここを抜ければ、ふもとのはずだが…道を間違えたのか?」
まさか。雪ノ下ではあるまいしと、不安を打ち消そうとするがうまくいかない。
地元から都会へ飛びだした田舎者の気分だ。
周りの景色が、全て同じようにしか見えない。
俯いてみれば、シダや苔が斑に沸き立ち、足場を悪化させている。
だからといって、顔を上げても、木漏れ日が優しく包んでくれる以上のことは望めないと思っていたのだが。
ひときわ高いが痩せぎすの木の梢に、白く揺らめくものがあった。
思わずぎょっとした俺は、身を強張らせる。
息を殺し、穴が空くほど見つめてから、ようやく肩を下した。
八幡「なんだ、ただの紙か」
と言っても、初めての人工物に安心したのは事実である。
引き寄せられるように、その木の下へと向かった。
そして腐った目を総動員して、紙を改めて凝視する。
八幡「…あれは紙飛行機?」
この場からあの高さまで飛ばしたとは考えにくい。恐らくは、この高原のもっと高い位置から飛ばしたのだろう。
それとなく、木に触れて揺らしてやろうとする。
貧弱な腕力では、木はぴくりともしなかった。
ならば、脚力はどうだろう。
腕力の三倍の力があると言われているではないか。
この世全てのリア充を思い浮かべながら、蹴りつける。
それは、涙がでるほどに痛かった。
しかし、普段は自転車をこぐことぐらいしか能のない脚が、今回は役に立った。
ざわざわと木の葉を揺らし、枝に挟まっていた紙飛行機を無事解放したのだ。
言いようのない虚無感を覚えながら、紙飛行機を手に取る。
和紙のようにざらざらした手触りだ。
そして、紙一面に大小さまざまな×マークが隅から隅までめちゃくちゃに書きなぐられていた。
ぞっとするような絶望が、書き手を襲ったのだとように想像がついた。
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