永琳「あなただれ?」薬売り「ただの……薬売りですよ」
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791:名無しNIPPER[saga]
2023/01/07(土) 22:49:04.98 ID:G+zmOxss0


「消え…………た…………??」



 おそらく、この女が久方ぶりに放ったであろう躊躇いの吐露は、結局は誰にも見られる事はなかった。
 単純な話である――――そこには”誰もいなかった”。ただ、それだけの話だったのだ。



「………………?」



「????????」



 では、先ほどまで話していた男は、一体なんだったのか。
 奇抜な服装に奇抜な化粧。耳は天へと先細り、瞳はうっすらと青みがかかったあの奇怪な男は。
 忘れようにも忘れられない、大いなる混乱をこの地に齎した、あの憎むべき男は。



【ああ――――くすりうりだ】



 女は、しばし思案に明け暮れた。
 ほんの一瞬目を離した隙に逃げられたのか。
 はたまた、奴の持つ奇怪な道具でもって、さっと姿を隠されたのか。
 どころかひょっとするとひょっとして、実は皆して夢でも見ていたのか。
 次から次へと湧いて出る仮説は無限の可能性を秘めており、しかし真実に到達する事は、決してなかった。



【ちげえねぇ――――ありゃたしかにくすりうりだ】



 が――――直に、どうでもよくなった。
 真実の追求を諦めたわけではない。
 ”今目の前に何があるのか”。その答えを、丸々一晩かけた末に、ようやっと気づく事ができたからだ。




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