永琳「あなただれ?」薬売り「ただの……薬売りですよ」
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510:名無しNIPPER[saga]
2017/12/13(水) 23:57:03.99 ID:M+tBv7c20


薬売り「神々の家系図に、なぜ兎が……?」

兎「――――ってな顔をしながら、あっけにとられる兎を尻目に、男はさらに続けた」
 

 曰く――――てゐと遊んでた子供が、全員何らかの形で名を馳せている事。
 てゐが住んでた家が、末代まで続く名家になってた事。
 てゐに部屋を貸した宿が、連日満員の一流旅館になってた事。
 その他色々と、これと似たような話が、兄妹連中が治める各地で点在している事。
 

兎「そしてその話が記された時期――――ちょうどてゐが、世界を旅していた期間だった事」



(のべ181名もいる我が兄妹ですが……誰一人として、国の一巡を成し遂げた者はおりませんでした)

(それは父上ですら成し遂げられなかった偉業……数多の子宝をこさえやっと収めたこの巨大な島を、たった一人で渡り歩いた者がいた)


 しかもその者は、一族どころか人間ですらなかった。
 オヤジが国造りを始めた裏で、人知れず世界を渡り歩き、兄妹達がその地に着く前からその地を興していた者がいた。
 「始祖を自負していた自分が、実は二番煎じだった」。
 その事実は、神々にとってもえらく衝撃的だった……らしい。


(この事実を突きつけた時、兄妹喧嘩は一発で収まりましたよ)

(あの時の意気消沈した顏は、実に見物でした……まるで童のように、キョトンとしておりましたから)


 確かに、向こうの立場で考えれば大問題だろうね。
 男の言う問題とは、国が分かれそうになった事なんかじゃなかったのさ。
 「――――神々を名乗る者共が、たった一羽の兎にとっくに先を越されていた」事実。
 そんな事も知らずに各地でえばりくさってた神々は、あまりの恥ずかしさに、揃って顏を真っ赤に染め上げた……らしい。


(語られぬ歴史の裏で……国造りの一躍を担った者が、もう一人いたのです)

(してそのキッカケは、ほんの小さな親切に対する、ほんのささやかなお礼だった……わかりますか?)

(小さな気持ちが集ってこそ国になるのに……あの神々を名乗る連中は、そんな事すらすっかり忘れておったのです)


 そう語る男の表情は、何故だか妙にうれしそうだった……自分も、その神の一人なのにね。




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