永琳「あなただれ?」薬売り「ただの……薬売りですよ」
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219:名無しNIPPER[saga]
2017/05/06(土) 21:46:42.30 ID:JykFf7uxo

【子】

(私もお師匠様の後を追う……誰も、止めないで!)


 噂が噂を呼び、兎はあっという間に都の人気者になりました。
 その人気ぶりはすざましく、誰もが「乱してくれ」と、連日行列ができる程でした。
 これに気をよくした兎は、連日その力を人々に見せびらかし、噂はさらに広まっていきました。
 そしてその噂は、ほどなくして、ついに月の高官の耳にも届きます。

 ある日、兎は月の高官・通称「月の使者」からの誘いを受けました。
 「その力、この都を守る為に役立てないか?」
 その誘いを、兎は二つ返事で承諾しました。
 「あら素敵。まるで英雄みたいじゃない」
 そして兎はその日から、月の人気者から月の番人へと転身を遂げました。

 「月の番人がただの兎では紛らわしいだろう」
 そう言った月の高官たちが、兎に名を与えます。


 「レイセン――――お前は今日からレイセンだ」



【亥】

(蓬莱の薬……そんな物が、本当にあるだなんて……)


 兎は初めて与えられた”名”と言う物に、大変喜びました。
 「我はレイセンなり」「我こそがレイセンぞ」。
 自分の名をしきりに誇示する兎に、他の兎は「いいな」「おめでとう」と羨やむ声を放ちます。
 そんな兎の声がさらに快感となり、兎はいつまでもいつまでも、自分の名を言い続けました。

 しかし兎は、夢中になりすぎて、全然気づいていませんでした。
 羨む声の中に、ポツリ、ポツリ――――妬む声が、混じっていることに。





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