永琳「あなただれ?」薬売り「ただの……薬売りですよ」
1- 20
189:名無しNIPPER[saga]
2017/05/04(木) 19:49:26.98 ID:jSwuJJZ7o

うどんげ「お前の……仕業か……!」

薬売り「違いますよ……この穴は、元々ここにあった穴です」

薬売り「こんなに深く掘って、あっしも、後始末が大変だろうと思っていたのですが……」

薬売り「どうやら……ほったらかしにしていたようで」

うどんげ「くっそォ! あのバカウサギだきゃほんと……!」


 穴は、元からそこにあった。
 よくよく目を凝らせば、暗がりながらなんとか見えなくもない。
 注視さえしていれば、その一部分だけの不自然さに、なんとか気づけたはずなのだが……。
 しかし見えなかった。それはやはり、闇夜に紛れていたが故。
 言い換えれば、”目を凝らす事をしなかった”からとも言える。


薬売り「にしても、そんなに息を切らして……一体何処へ行こうと言うのです」

薬売り「今はまだ丑の刻……夜明けにはまだ、少々速いですぜ」


 影。元い玉兎の行動は、夜分に相応しくない不可思議な物であった。
 穴に落ちて止まったからよかったものの、穴がなければ今頃疾風と化し、とおの昔にどこぞの地へとたどり着いていた事であろう。
 その行動は一言で言う「逃亡」に等しい。

 師も、姫も、友も。安住の地の全てを放り出してまで――――
 一体この玉兎は、どこに向かおうと言うのだろうか。


うどんげ「お前には……関係ない……!」

薬売り「おやまぁ、関係ない事ございやせんでしょう? だって……そうじゃないですか」

薬売り「モノノ怪に攫われた三人の哀れな供物……それをも霞掛ける、貴方の内に御座す”闇”」

薬売り「もう、気づいているんでしょう? その闇こそが……モノノ怪をこの地へ誘う”糧”であると」


うどんげ「ぐぅ…………!」


 ぐぅの音も出ぬとはまさにこの事である。
 もはや言い逃れの出来ぬこの状況。
 玉兎は、ついに観念したか……その重い口を、ようやっと開きなすった。
 
 その口から出る言葉からして――――やはり玉兎も、最初から気づいていたのだ。
 薬売りの言う「モノノ怪を成す因果と縁」。
 その説を聞いた時点から、モノノ怪の主体は、”我が身に押し込めた因果にある”、と。



【鈴仙・優曇華院・イナバ――――之・理】





<<前のレス[*]次のレス[#]>>
808Res/717.96 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice