88: ◆TEm9zd/GaE[sage saga]
2018/11/02(金) 09:18:27.44 ID:rlpAyYI4O
女「ほら、帰ろう。着替えておいで。ジャージ下校はダメなんだってさ」
お嬢様「え……はい」
女「じゃあ私先生にお嬢様が目を覚ましたこと伝えてくるから。そしたら下駄箱で待ってるよ。途中まで――」
お嬢様「あの、私、車で、その……迎えが来るんです……」
女「あぁ――そういえば今朝も来てたね。暗くなるし送り迎えがあると安心できていいよね」
お嬢様「う、うん。安心! そう、安心なの! だから、その――」
お嬢様は一呼吸置き、振り絞ったのは声と、勇気。
お嬢様「一緒に帰りませんか!!」
女「すみません、わざわざ送ってもらっちゃって」
爺や「いえいえ、良いんですよ」
人当たりのいい声音は運転席から。
えーただいまわたくしリムジンに乗っております。
ご覧ください。車内に冷蔵庫がございます。
光量を抑えたライトの下にはテレビがすえおかれております。
それにこの窓、ライフルだって通さない防弾ガラスでできているんですって。
……えらいものに乗ってしまった。
件の車窓から見る空は真黒く塗りつぶされとっくに日が沈んだことを語っていた。
空に黒いペンキがぶちまけられる前、暮れたオレンジに染められた保健室でのお誘い。
一緒に帰りませんか。
そういったお嬢様に私は、頷いた。
せっかく勇気を出してくれたであろう誘いを無碍にするのは悪い。
そんな思いで誘いに乗ったら、校門前にいたのは今朝も見た顔。
それに向けられる視線が痛くてそそくさとそれの前から退散したのを思い出した。
黒塗りのリムジンがそこにいた。
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