メイド「私の嫌いな貴方様」
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72: ◆TEm9zd/GaE[sage saga]
2017/11/02(木) 19:21:14.15 ID:5olEjRTB0


人の波にのまれながら、くだらないことを考える。
なぜ、部活動説明会が終わったらそのまま現地解散にしてくれなかったのか。なぜいったん教室に戻したのか。
いや後片付けとかあったんだろうけど。その兼ね合いのせいでホームルームもお姉ちゃんじゃなくて副担の中年狸だったし……。
恨むぞう。

そんなこんなで――


お嬢様「おお……!」

やっとこさ辿り着いた体育館は活気に溢れていた。

活動していた部活が演劇部だけじゃなかったのだ。
コートを二分割して、舞台から見て奥がバスケ部、手前がバレー部。


女「おお……お?」


そして、目当ての演劇部は舞台の上…………のみ。

どうやら体育館内的ヒエラルキーは低いらしい。


ううむ……あれじゃあ大して活動できないのではないだろうか。

もしかして熱心に活動してない?

大した結果残してないからあんなに活動場所少ないの?

あれじゃ大人数で練習もできないよ。ひょっとして少数精鋭?


などと、ぐだぐだ疑問を浮かばせ舞台手前で二の足を踏んでいると、


お姫様「あら……ひょっとして、演劇部への入部希望者かしら?」


舞台の上から、近くで見るとやっぱりおざなりな出来を見過ごせないドレスに身を包んだ女性に話しかけられた。


彼女を見てお嬢様は目を輝かせたきっらきらだ。少女漫画だったらキラキラの効果が惜しげもなく使われていることだろう。

お嬢様「は……はい! けっ……見学しても――い、いいで――」


おおう、相変わらずのどもりっぷり。
変な子を見るような眼をされなければいいけど。

と、思っていると、お姫様の姿をした女性は目を見開いてまじまじとお嬢様の、その次に私の顔を見て、きょとんとした顔をした。


お姫様「あれ……アンタたち……」

あれら?
お姫様から演技の仮面がずり落ちたぞ。


お姫様「へぇーなるほどねー……まあ歓迎歓迎。仲良くしようか」


お嬢様「へ……あっ、はい」


なんか気に入られたらしい。


突然崩れた口調。一人訳知り顔のお姫様。

どういうことだと脳が疑問を吐き出して、ふむ、何故かと考える。
よし、今から私はシャーロキアンだ。ホームズの小説、読んだことないけど。

きっとよく観察して真相を明るみにさらけ出すんだ! みたいなことを言っているに違いない。
現場百編だ。事件は現場で起きておる。祖を知れば自ずと真実に至るのだ。
みたいな。

――なお、余談だが、私がホームズが安楽椅子探偵だと知ったのは数年先のことだ。




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