56: ◆TEm9zd/GaE[sage saga]
2017/03/21(火) 15:30:24.27 ID:vPr4H0MT0
私の呟きを聞いて、お嬢様はゆっくりその意味を呑み込むと、しまったと目を大きくさせた。
あまりにも大袈裟に目を見開くものだから彼女の背後にぬらりひょんを空目したが、今は関係ない。
むしろ彼女がそんな反応をしたものだから、こっちは直ぐに冷静に帰れた。感謝する。
女「ご……ごめんね、不躾に失礼なこといって……」
お嬢様「い……いえいえ……そうだよね……普通こんなデカイ車じゃないよね……」
妙な空気になりかけたとき――
???「お嬢様――!」
不意に、初老の男性がこちらに向かって声をかけてきた。
その燻し銀な声はリムジンのドアが閉まる音と共に――
お嬢様「爺や」
そう言ってお嬢様は一変、救われたような顔になり男の方に顔を向けた。
実際、私も変な空気から救われたという気持ちでいたが……爺や、ときたか……。
これって、あれ? 漫画とかでよく見る、代々家に仕える使用人ってやつ? そんな馬鹿な。
またもポカンとしている私に、爺やは目を向けて――。
爺や「こちらの方は――?」
お嬢様「あっ、女っていうの……今朝私のことを助けてくれて……」
爺や「ほうほう……では連絡にあった少女というのは、彼女……」
爺やは見てるこっちがほっこりするような人好きのする笑顔を浮かべた。
そして、うやうやしく頭を下げて、
爺や「これはこれは、この度はどうもご迷惑をお掛けしました」
女「い、――いえいえ、そんな……」
お嬢様「ねえ、爺や……女を、家まで送ってあげてほしいの……遠いそうなんだけど」
爺や「ええ、いいですよ。なんでしたら当家に招待してもてなしてもいいくらいです」
お嬢様「そうね――それもいいわね! どう、女――まだ午後になったばかりだし、寄ってかない?」
どうだとばかりに詰め寄られ、
女「ごめん……やっぱり、電車で帰るね……」
謎に高いテンションに煽られてふらふら。知らない世界に触れてくたくた。
正直疲れてしまった。もし、このままリムジンに乗ったら帰路全てが私の精神を磨耗させてくることに全力を出してくるだろう。
これだったら電車で帰った方がましだ。
そう思えるくらい、今日の自分は他人とかかわる余裕がないと、今更ながら気づいたのだ。
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