メイド「私の嫌いな貴方様」
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54: ◆TEm9zd/GaE[sage saga]
2017/03/20(月) 17:58:58.61 ID:KDAd6j9R0

 人一人の手を引いて歩くというのは、なかなか疲れるものである。
 相手が混乱しているうちにやるのだからなおさら。


 トタトタトタ。
 階段を危なっかしくも下りきり、下駄箱の手前まで着て手を放した。


お嬢様「ど、どうしたの突然!?」


女「ごめん……その……お姉ちゃんがいたから……」


お嬢様「……ぇ、どうして先生がいたから? 知り合い、なんだよね?」


女「そうなんだけど……気まずいというか……」

 こちらが一方的にそう感じてるだけ。現にお姉ちゃんはにこやかに私に接してきていた。


 不意に、チクリと胸が傷んでグーにした手で抑えた。
 ネックレスが鼓動に揺れる。

 心臓に一番近いところにあるそれ。

 それはお姉ちゃんから貰った宝物。

 それは昔の――私と一緒にいた頃のお姉ちゃんが、確かにいたという証明。
 逆に言えば、彼女が変わってしまったことの証明に。

 思い出に無い私の知らないお姉ちゃん。


 抱いていた憧憬も。一方的な想いも。
 吹っ切るためにここに来たのに……。


お嬢様「ぉ……女……」


女「あ、うん……ごめんね勝手に……えっと……なんのよう?」


 はっとしてお嬢様に話を促す。
 よくよく考えればお嬢様には失礼なことをした。
 ひょっとしたら、早々に帰ることを決めていた私と違って、誰かと約束があったかもしれないのに……。


お嬢様「ぇっと……今朝、あんなことが、あったから……家の人が迎えに来るの……」


女「うんうん」


お嬢様「あの……車だから、良かったら一緒に……」


女「えっと……遠いよ、うち」


お嬢様「だったら、なおさら……っ、その……一緒に……帰らない?」


女「……じゃあ、迎えに来た人に聞いて、良かったら……」

 正直、この心理状態で二時間も電車に揺られたくなかった。


お嬢様「ほんと!? たぶん……大丈夫って言ってくれると思うから、大丈夫……」


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