123: ◆TEm9zd/GaE[sage saga]
2019/03/09(土) 19:55:56.09 ID:XWj0qJN60
ふいにお姉ちゃんがこちらを向いた。
その顔は冷めたものに変わっていた。
「―――、―――?」
女「――っ」
お姉ちゃんが何事か呟く。
虚ろな視線をこちらに向けて。
その呟きを理解することを頭は拒否しようとしたが、しかしけれどもそんなわけにはいかない。
その言葉の意味を理解した瞬間、万華鏡がぐるぐると高速で回転しだした。
幾億と姿を変えるそれ。
色とりどりの世界から次第に色が薄れ始めた。
急速に灰色になっていく視界。
そんな世界から切り離されたように色を保ったお姉ちゃんはそこにいる。
ああ……あああ、灰色になって世界に溶け込んでいく私。
徐々に色を失う私は、それでもお姉ちゃんから目を離さなかった。
未だにニコリとも笑わないお姉ちゃんの顔はやっぱり綺麗で。
女「――……はぁ……」
その顔を見てるとさっきの呟きが思い起こされた。
体から力が抜けた。
その場にへたりこんだ。
顔を伏せ、すっかり色を失った味気のない地面を見つめる。
脳裏には、面影はあるが記憶とは違う大人の女性が。
よもや知らない女性だ。
なにせ今の彼女のことをほとんど知らないのだから。
見た目も、中身も。
彼女は、初恋の人じゃない。
変わってしまっている。
そんな彼女の呟き。
「あなた、だれ?」
あんたが誰だよ。
色のない万華鏡のなんとつまらないこと。
ついには視界が真っ黒になった。
お姉ちゃんはもう見えない。自分も見えない。
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