会長「音が紡ぐ笑顔の魔法」
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198: ◆MOhabd2xa8mX[saga]
2018/05/06(日) 00:09:22.50 ID:oAmXNntKO

同時刻

近所では少しだけ名が知られている会員制のレストラン。本日のメインとして招待された若手のジャズバンドが小気味よい即興演奏を行い場を湧かせる最中、ある1つのテーブルでは場違いとでも言わんばかりに聞いていても心地の良くない会話が繰り広げられていた。

周囲の目も憚らず、テーブルには男の両親と姉、祖父母が一堂に会している。

母「お母さんとお父さん、良い音よ。これを家族で聞く為に今日は集まった筈でしょ?」

父「お義母さんとお義父さん、良い音ですよ。いやー今日は記念すべき日ですね。こうしてまた集まれた」

祖母「あなた達にお母さんと言われる筋合いはありません」

祖父「2人揃ってお母さんとお父さんなんて気持ち悪い、どうした?言いたい事は何も無いのか?」

祖父母が出す険悪な雰囲気に対して父と母は何処吹く風だ。
最初からまともに取り合う気も無いかのように。

姉「……」

祖母「どうして今更顔を出したの?」

母「実はね、姉は今度行われるフェスに出場する事になったの」

祖母「フェス……よく分からないけど、凄いのかしら?」

父「ええ、ジャンルを問わずにインディーズの若手実力派が集まります」

祖父「いんでぃーず?」

父「ふっ……まぁ、プロではない若手ミュージシャンの祭典と言ったらわかりやすいかと」

祖父を小馬鹿にした態度をほんの一瞬、わかりやすく出してしまう。

これが父という人間のほん一端、決して悪気があわる訳では無い。

祖父「あ?今鼻で笑ったか?」

母「気のせいよお父さん」

祖父「お前は黙ってろ!」

祖母「やめてよこんな所で……」

祖父「ちっ……」

父「私のツテで参加出来るようになりまして……」

母「この子の実力だって立派よ、きっと良い結果を残すわ」

祖父「そうか、それは良くやったな」

祖母「おめでとう」

祖父母の言葉は心からの本心、姉だって可愛い孫の1人なのだから。

姉「……」エッヘン

が、どうしても気になる事がある。

祖母「……」

聞いても録な事が無いだろう。
このレストランに来てから2時間弱、本当に話すべき事を話さずにずっと無言の食事をしていたのだから。

祖母「男は……気にならないの?」

母・父「……!」

父「あ、あぁ、男は元気にしてますか?」

母「ずっと気になってたの、しっかりご飯食べてるかしら」

祖母・祖父「……」

2人は年の功なのか、人の親としてなのか、今の反応だけでこの2人と男が再び笑い合える日が来る事は二度と無いと理解した。

今日、この場に男を連れて来なくて本当に良かった。

あまりにも惨い。

祖母「姉に対する愛情を少しだけでもいいから男に分けてやれなかったの?」ボソッ

祖父「……」

呪詛のように小さく呟かれた言葉が祖父以外に届く事は無かった。


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