俺ガイルSS 『思いのほか壁ドンは難しい』 その他 Part2
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[sage]
2022/10/10(月) 09:53:10.72 ID:4j2wPxKL0
八幡「あー…、もしかしたら、あいつもしばらくとはいえお前に会えなくなるのが寂しかったんじゃねぇのか?」
俺達に対するちょっとした悪戯を兼ねたサプライズ、みたいなものなのだろう。
色々な誤解も解け、少しだけ気持ちに余裕が生まれた俺が何の気なしに口にしたそのひと言に、
雪乃「あら、寂しがっているのは由比ヶ浜さんだけなのかしら?」
挑発的な笑みを浮かべながら俺の顔を覗き込むようにして切り返す。
雪乃「それに勘違いとはいえ、ここまで私を追いかけてきた比企谷くんとしては、今のうちに私に何か言っておくべきことがあるのではないかしら?」
八幡「えっと …… いってらっしゃい気をつけて、とか?」
雪乃「処置なしね」 呆れ顔でばっさりと切り捨てる。
八幡「や、でも、そういうのはアレだ、強要されて言うもんでもねぇだろ」
雪乃「確かにそれもそうね。……… だったら自発的に言わせてみせればいいのかしら、無理矢理にでも?」
八幡「だからそれを“強要”と言うんだ、日本語で」
雪乃「そう。ごめんなさい。 私、こういうのは初めてだから、その、うまく言えないのだけれど …… 」
八幡「お、おう」
雪乃「私の事が好きなら正直にそう言った方があなたの身のためよ?」
八幡「なんで脅迫みたいになってんの?」 殺し文句じゃなくて脅し文句だろそれ。
雪乃「でも、もし私が本当に留学するつもりだったとしたら、あなた、いったいどうやって引き止めるつもりでいたの?」
八幡「あん? それは、その、えっと、ほら、色々あるだろ ……… いざとなったら強引に」
雪乃「強引に?」
八幡「土下座とか?」
雪乃「 ……… さすがに国際空港で土下座されても私としては困るのだけれど」
八幡「や、心配すんな。慣れてるから」
雪乃「心配するなと言われても安心できる要素が何ひとつ見当たらないわね。むしろ土下座慣れしていると公言して憚らないあなたの将来が心配になるくらいよ」
やれやれといった感じに首を振る。
八幡「えっと …… とりあえず、まぁ、そういうことだから。邪魔したな」
何がそういう事なのか自分でもよくわからないが、居心地の悪くなった俺は、しゅたっと手をあげ、できるだけさりげなくその場から立ち去ろうとすると、
雪乃「お待ちなさい! 話はまだ終わっていないわよ」
いきなり上着の衿をぐいとつかんで引止められ、反射的に仰け反ってしまう。と、
―――― ぽとん
その途端、俺の上着のポケットから紺色の小さな手帳のようなものが床に落ちた。
慌てて拾い上げようとする俺より早く、雪ノ下がそれを手に取る。
雪乃「これって …… 」
降り注ぐ照明に踊る菊の紋と金色の文字を目にした彼女の瞳が大きく見開かれ、同時に息を呑む気配が伝わってくる。
次いで俺に向けられたもの問いたげな視線に、どんな反応を示していいかわからず、つい明後日(あさって)の方向に目を逸らす俺。
ややあって、拾った手帳をこちらに差し出しながら、雪ノ下が心持ち上ずった声で告げた。
雪乃「 …… きょ、今日のところはこれくらいで勘弁してあげるわ。お、覚えていなさい」
八幡「 …… だからなんで悪役の捨て台詞みたいになってんだよ」
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