【ペルソナ5】9股かけたけどやっぱりたった一人を決めていく・後編【安価SS】
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◆86inwKqtElvs
[saga]
2017/07/05(水) 10:16:32.47 ID:gs3hnXCZ0
何もかも間違っていて、間違った自分はもう何も手に入れられないと思ってた。
「――え?」
だから、間抜けな声を出してしまっても、仕方ないでしょう?
…………、
本当か、彼が宛先を間違えたんじゃないか、自分でいいのか、その資格はあるのか。
資格。あれだけ壊れてしまえばいいなんて思って、実際に壊そうとしたのに。
コーヒーの匂いがしてきた。私にとっては彼といえばこの香り。思い出の香り。
《ルブラン》
ホワイトデーの今日、私はここに呼ばれた。
「呼び出してごめん」
どこか飄々とした表情は、あまり感情を読み取れない。
そのくせに、瞳には強い光がある。私が好きな人は、そんな人だった。
今もそれは同じで、ごめんと言っておきながら申し訳なさそうな感じは見当たらない。
それが時々腹が立つ。私のほうが年上なのに。うまくいなされている感じがする。いつも。
「お邪魔します……今日は、おじ様は?」
彼がカウンターに立っていてコーヒーを淹れているのだから、今日のために席を外してくれたことぐらいはわかる。そもそも看板は『Closed』だったのを確認してる。
わざわざ訊くのは、ただの時間稼ぎだった。
「今日はいない」
返ってきたのも、当たり前の返事。
彼が淹れたてのコーヒーを持ってきて、隣に座った。
「…………」
「…………」
会話が途切れた。
前はこの沈黙の時間も、居心地がよかったはずなのに。
前はどんな話をしていたんだっけ?
前はどんな顔をしていたんだっけ?
前は、前は……、
何もかも手に入らないなら何もかも壊してしまえと、子供のような癇癪を起こす前は、どんな私だったんだっけ?
「…………」
やっぱり、言わないといけない気がした。
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