【ペルソナ5】9股かけたけどやっぱりたった一人を決めていく・後編【安価SS】
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421: ◆86inwKqtElvs[saga]
2017/02/23(木) 21:54:34.20 ID:2XFDeyll0

「楽しいよ。彼はね、絶対諦めない。仲間だった頃の私が生きてるって、まだ信じてる」
 だから優しくして、期待させて、その気持ちを裏切って。
「そのたびに彼は傷付くよ。その時の彼の辛そうな表情が、本当に好きなの。もう何度か繰り返してるけど、何度でも見たくなっちゃう」
「そう。春は変わらないね」
「そうだよ。彼もいつか諦める時が来るのかな。でもそれはそれで楽しみだなって思うの。あれだけ強い心を持った人の心を折るって、それってある意味すごく特別だよね?」
「そうかもね」

 春のこういう露悪的な言葉を流す方法は覚えた。自分が傷付くことも春がこっちの暗い感情を刺激したくて言っているのもわかっているけど、それでも話を聞いて少しでもガス抜きになって、彼の負担が少しでも楽になればいい。
 彼に春を押し付けたのは、私なんだから。
「マコちゃんさ」
 急に春のトーンが変わった。春は敵ではない人間には優しい。昔は敵味方なんて関係なかったけど。
「杏ちゃんあたりから言われない? 忘れた方がいいって」
「なんで知ってるの? ……あと、春から言われることじゃないと思うけど」
「元凶だもんね。あと、やっぱり杏ちゃんは優しいね。マコちゃんっていつもこんな中途半端な位置にいて、私から見てもよく我慢できるなっていつも思ってるもの」
「……うるさい」
 恋人の友達として傍にいたいのか。
 安易な選択で彼に押し付けた贖罪がしたいのか、自分でもよくわからない。
「忘れないなら、マコちゃんは私から彼を奪おうとは考えないの?」
「できると思うの?」
 犠牲を躊躇せずあれだけ立ち回った春に対して、私みたいな恋愛オンチがそんな真似をできるとは到底思えない。
「わかってないな。できるかできないかで考えちゃうからダメなんだよ? するか、しないかだよ」
 した結果、春は優しさを手段に、裏切りを目的に――そんなふうに変わってしまったのに。
「春、実は最近退屈してるでしょ? 状況掻き乱したいからって私を使うのは止めて」
「私自身がたくさん裏切ってきたのに、彼が裏切らないなんて信じてないだけだよ。そしてマコちゃんは、今彼が幸せだなんて考えてないんでしょ?」
 春がどこまで本気で言っているのか、よくわからない。
 ただその言葉は、的を射ていた。
 彼を救いたいなら、春から奪わないといけないのではないか――
「バカバカしい。春、あまり私でからかわないで」
「ふふ、ごめんなさい。マコちゃんがいじらしくて、つい」
 ようやくいつもの微笑みに戻ると、紅茶を淹れるのを忘れてたと、キッチンに入っていく。
 たったこれだけのやり取りで、背中には冷や汗が流れている。
 冷たい微笑を浮かべている時の春とは、絶対に敵に回したくない。






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