【ペルソナ5】9股かけたけどやっぱりたった一人を決めていく・後編【安価SS】
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178: ◆86inwKqtElvs[saga]
2017/02/10(金) 10:38:43.76 ID:Gke7huEw0

 もう駄目だ、と思った。
 この人は、私が何をしようかまで分かっててそんなことを言っている。
 この人の破滅の中には、自分も含まれている。
 自分の命もきっと、例外じゃなく。
 それでも、私は――

 バッグの中から、“武器”を取り出した。

「それがあなたの武器ですか」

 呆れも感心も、声からはわからなかった。
 死に対する恐怖も、私には視えるのに。
 だけど声や表情は、あくまで平然としている。
 この子はあくまで貫き通す。それがどれだけ破滅を呼び込もうとも。
 だから、私は――

 腰に構えて、突進する。
 春さんは避けるそぶりを見せなかった。
 ただ彼が、春さんを引っ張って無理矢理に避けさせて、
 手足の白い黒猫が、私の腕に纏わりついた。
 それでも突進は止まらなかった。
 予定していた位置とはずれたけど、それでも武器は――
 ナイフは春さんの腹部に吸い込まれた。

「春!!」
「にゃあ! にゃあ!」

 彼と黒猫が叫んでいる。
 私は茫然とへたり込んだ。

「にゃにゃにゃあ! にゃあ!」

 黒猫が叫ぶと我に返ったように彼がどこかに通話する。多分救急車を呼んだんだろう。
 思ったより、血だまりというのはできなかった。ただ、お洒落な服を、赤色に染めていく。

「御船、さん」
 息も絶え絶えに、倒れ込んだ春さんは重傷の筈なのに、私の名を呼んだ。
「何か、紙と……ペンを……貸して、くれませんか?」
 いつも持っているものしかないけど、それでもいいと言われたので黙って貸した。
 何かを書いている。遺言を書いているのだろうか。
 もう私は、自分のやったことに耐え切れなくて、目も耳も塞ぐしかなかった。

 耳を塞いでも、サイレンの音だけは聞こえてきた。



 懲役1年9か月、執行猶予3年。
 私に課せられた刑だった。
 本当はもっと重罪を望んだのに、むしろそれが反省していると言われてしまって、皮肉にも刑が軽くなってしまった。
 3年の歳月をこそこそと隠れ住まないといけなくなるけど、正直それは故郷のあの村での扱いよりはマシだろうと思えた。
 ――隣に彼がいるから。
「大丈夫? 千早」
 顔色が悪いよと、コーヒーを差し出してきた。彼の淹れるコーヒーは確かに、心を落ち着ける何かがある。
「もう、占い師じゃ、ないんですよ……なんで……」
 人生を視るあの力が、彼女を刺した時から消えてなくなった。
 春さんは急所を外して生きていた。未だに思う。
 彼の為に春さんを排除しようとしたのか、嫉妬で消えてほしかったのか。
 刑罰は、よくわからないけど殺人未遂としては比較的軽いと聞いた。
 それにはなんと、被害者の嘆願もあったという。
 彼女が最後に書いたノートの切れ端には、こうあったと、コピーを見せられた。

『加害者の減刑を望みます 奥村春』

 丁寧にも自分の血で拇印を押していた。他にも、私の今までのお客さんが署名とかしてくれたらしい。
 それでも罪は消えない。こうなるとは分かっていたけど、辛い。
 今私は、心理学の勉強をしている。
 相談の経験が豊富だから、第二の人生はカウンセラーがいいんじゃないかと彼が勧めてくれた。
 そんなお金はないと言った。占いで稼いだお金は今まで騙していた人たちへの返済に充てていたから。
 そうしたら、彼が驚くようなことを言ってきた。




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